お気に入りの植物を、ご自身で増やしてもっと楽しんでみませんか。「挿し芽(さしめ)」や「挿し木(さしき)」という方法を使えば、ご自宅の庭や鉢で育てている植物を、増やすこともできるんです。

今回は、ガーデニング初心者の方にも分かりやすく、挿し芽・挿し木の基本と失敗しないコツをご紹介します。

挿し芽とは?挿し木とは?

挿し芽挿し木入門

挿し芽や挿し木は、植物の枝や茎を切って土や水に挿し、新たに根を出させて増やす方法です。親株と同じ性質を持った苗を作ることができる「栄養繁殖」のひとつです。

「芽が出た!」「根付いた!」という小さな感動が、植物との暮らしをさらに豊かにしてくれます。

挿し芽や挿し木は種から育てるよりも成長が早く、親株と同じ性質を持つ苗を作ることができるのが特徴です。挿し芽・挿し木には、「土挿し」のほかに、「根挿し(根伏せ)」や「葉挿し」などの方法があります。いずれも元になる親株から枝や茎、根などを切り取って行います。

土挿しとは

植物の挿し芽・挿し木方法の一つで、切り取った茎や枝などを直接土に挿して発根させます。根がそのまま土に伸びるので、植え替え時の植物のストレスが少ないのがメリットです。

根挿し(根伏せ)とは

根挿しとは挿し穂に根をつかう方法で、根伏せとも呼ばれます。植え替えの際に切り取った根を用土に埋めて、そこから芽を出させます。

水挿しとは

水挿しとは、穂木を土挿しせずに水に挿した状態で根を出させ、その後土に植えて育てる方法です。アイビーやポトス、バジル、ミントなど、切り取った茎を水につけておくと簡単に根が出てくる植物におすすめです。

挿し芽と挿し木の違い

一年草や多年草などの草花は挿し芽、バラやアジサイなどの木は挿し木と呼ぶのが一般的です。どちらも元の植物から茎や枝を切り取って作った「挿し穂」を使って行います。

挿し芽・挿し木を楽しむ前に知っておきたいこと

「挿し芽」や「挿し木」は、おうちの植物を増やして育てるガーデニングの楽しみ方のひとつですが、許可なく無断で譲渡したり販売するのは注意が必要です。特に、登録品種(新品種として登録されている植物)は「種苗法」という法律で守られており、個人利用以外で増やすことは禁止されています。

挿し芽挿し木入門

種苗法に違反した場合、個人の場合は10年以下の懲役あるいは1,000万円以下の罰金、又はその両方が課せられます。それ以外に、品種登録者から損害賠償請求などを起こされる場合もあります。

園芸を気持ちよく楽しむためにも、お手元の植物が登録品種かどうか、一度チェックするようにしましょう。

ただ、個人の方が自宅の庭や鉢で楽しむ目的で、挿し芽や挿し木をするのは基本的に問題ありません。「かわいいから増やしたい」「もっと楽しみたい」という気持ちを大切にしながらも、育種・開発した人へのリスペクトも忘れないようにしましょう。

挿し芽・挿し木におすすめの植物

ガーデニング初心者の方が、初めて挿し芽や挿し木に挑戦するのにおすすめの育てやすい植物をご紹介します。

挿し芽におすすめの植物
挿し芽挿し木入門

節からすぐに発根しやすいペチュニア、カリブラコアから挑戦してみましょう。目に見える生長をしてくれるので、ガーデニング初心者の方にとっても成功を実感しやすい植物になります。

他にもマーガレット、ペンタス、ランタナ、キク、ポトス、アイビー、バジル、ミント、トマトなどが挿し芽に人気があります。

挿し木におすすめの植物

ガーデニング初心者の方に一番おすすめなのが、アジサイ(紫陽花)です。他には、バラ、ツバキ、ラベンダー、ローズマリー、クチナシ、ハイビスカスなどなどが挿し木に人気があります。

挿し芽・挿し木におすすめの時期

挿し芽・挿し木を成功させるポイントの1つは、時期の選び方です。

挿し芽や挿し木は、植物の活動が活発で根が出やすい、植物の生長期に行いましょう。多くの植物は、気温が15℃~25℃程度で、春〜初夏、もしくは秋が適期になります。
ただ、バラの挿し木は気温が20~30℃になる5月~7月頃、アジサイは6月~7月頃、落葉樹では新芽が生長し始める前の2月中旬~3月頃など、植物によっては適期が異なります。観葉植物や多肉植物などはそれ以外の季節でも可能です。

基本の挿し芽のやり方

1
健康な枝をカットします

挿し芽挿し木入門
元気な葉がついた枝を10cmほど切り取ります。下葉は取り除き、清潔なハサミを使うのがポイントです。切り戻した茎を使う場合は、勢いのあるものを選んで挿し穂にしましょう。新芽は萎れやすいので、ある程度しっかりした茎を選びましょう。
挿し芽挿し木入門
茎の切り方
茎の節の少し下を清潔なカッターナイフなどで切りなおします。水を吸うのはこの切り口だけなので、できるだけ切り口の面積が大きくなるようにします。ハサミは導管をつぶしやすいので、よく切れるナイフやカッターを使いましょう。
葉を減らす
根がない状態になるので、蒸散を抑えるために葉を減らします。葉がたくさんついている場合は、挿し穂の上部の葉を残して取り除きましょう。大きい葉は面積を減らすために半分に切ります。

2
水に浸けて給水します

挿し芽挿し木入門
茎の下の方の葉をハサミで取り除き、挿し穂を1時間程度水につけて水をよく吸わせます。水の代わりにメネデールなどを規定通りに薄めた液を使うのもおすすめです。

3
挿し穂を挿します

挿し芽挿し木入門
挿し床に割りばしで穴を開け、挿し穂を挿し、周りの土を指で押さえて挿し穂が動かないようにします。

4
明るい日陰で育てます

挿し芽挿し木入門
清潔な挿し木用の土に枝を挿し、明るい日陰で管理します。乾燥しないように水やりを忘れずに。約2〜4週間で発根します。最初の芽吹きや根づきは、とても嬉しい瞬間ですよ!

5
鉢上げします

茎の上部から新しい葉が出て鉢底から根が見えてきたら鉢上げのタイミングです。市販の培養土などを入れた3号ビニールポットに鉢上げし、もう少し大きな苗になるように育てましょう。1週間ほど明るい日陰に置き、その後、徐々に直射日光に慣らしていきます。

挿し木のやり方【バラ編】

1
健康な枝をカットします

挿し芽挿し木入門
葉がついた茎を3~4節つけた長さで切り取り挿し穂にします。春の花後の切り戻しのタイミングで挿し木用の枝を取るとよいでしょう。木質化した枝や新芽は挿し穂には使えません。ある程度しっかり育った黄緑色の枝を選びましょう。

2
挿し床の準備をします

挿し芽挿し木入門
赤玉土小粒をやや深さのある鉢に入れ、水を吸わせて十分に湿らせておきます。

3
挿し穂の準備をします

挿し芽挿し木入門
茎の切り方
枝の節の少し下を清潔なカッターやナイフで斜めに切ります。水を吸うのはこの切り口だけなので、できるだけ切り口の面積が大きくなるようにします。よく切れるナイフやカッターを使いましょう。
挿し芽挿し木入門
葉を減らす
根がない状態になるので、蒸散を抑えるために葉を減らします。挿し穂の上部の葉2枚程度を残して残りは取り除き、葉が大きければ半分の大きさに切りましょう。

4
挿し穂に吸水させます

挿し芽挿し木入門
枝の下の方の葉を取り、メネデールなどを規定通りに薄めた液につけて1時間ほど吸水させます。

5
発根促進剤を切り口につけます

発根率を上げるために、ルートンなどの発根促進剤(粉末)を、切り口を傷めないように注意しながらまぶすようにしてつけます。付け過ぎに注意しましょう。

6
挿し穂を挿します

挿し芽挿し木入門
割りばしで茎を挿す部分に穴を開け、挿し穂を挿し、周りの土を指で押さえて挿し穂が動かないようにします。茎の切り口を傷めないように注意。挿し床に割りばしで穴を開け、挿し穂を挿し、周りの土を指で押さえて挿し穂が動かないようにします。最後に水をたっぷり与えて用土と挿し穂を馴染ませます。

7
明るい日陰で育てます

鉢皿に水をためて底面吸水させるか、土が乾燥しないよう土が乾ききる前に水を与えます。乾燥するようだったら霧吹きで葉の周りの湿度を上げましょう。上を空けたポリ袋などの中に入れて霧吹きで湿度を高めるのもおすすめです。

8
鉢上げします

茎の上部から新しい葉が出て鉢底から根が見えてきたら鉢上げのタイミング。市販のバラ用培養土を使ってバラ用の鉢に植え替えましょう。

挿し芽・挿し木のよくある質問

挿し芽挿し木入門
Q
葉が枯れました。どうしてでしょうか。
A

葉が枯れるのは、挿し穂自体水分管理に問題があるのかもしれません。

挿し芽や挿し木に使う挿し穂には根がついていないため、水分を吸収できるのは切り口のみになります。小さな茎を挿し穂にしていたり、よく切れないハサミで挿し穂の茎をつぶしていたりすると枯れやすくなります。

水分管理がうまくいかないと感じたら、葉を少し減らして蒸散(葉から水分が出ていくこと)を抑えるのがポイントです。まずは切り口からしっかり給水させてから、土やまわりの湿度を保ち、葉がしおれないようにしましょう。挿し芽を上が開いたビニール袋に入れて、霧吹きで中を湿らせておくのもおすすめです。

最初についていた葉が枯れてしまっても、茎がまだ緑色で新芽が出ているようなら、育つ可能性があります。その場合は、あわてずにしばらく様子を見てみてくださいね。

Q
根が出ません。原因として何が考えられますか。
A

根が出ない場合は、いくつかの原因が考えられます。たとえば、

・挿し穂の切る場所が適していなかった

・用土や置き場所が合っていなかった

・根が出やすい「節」の部分が土に埋まっていなかった

・植物が生長しにくい時期だった

・挿し穂を何度も動かしてしまった

などです。もしいつまで経っても根が出ない場合は、新しい挿し穂を用意して、気温や湿度に気をつけながらもう一度チャレンジしてみましょう。植物によっては、ちょっとした工夫で成功率がぐんと上がりますよ。

Q
発根剤は使った方がいいですか。
A

ポトスやアイビーなど水に挿しておくだけですぐに根が出るような植物は発根剤を使わなくても簡単に挿し芽ができますが、バラなどの挿し木をする場合は発根剤を使うと成功率が上がります。

Q
挿し芽や挿し木に成功したらお友達にあげてもいいですか。
A

せっかくだからガーデニング友達にもおすそ分けしたい!という気持ちもわかりますが、品種登録された植物を挿し芽や挿し木で増やして他人に譲るのは、種苗法という法律で禁止されています。あくまで個人で楽しむようにして下さいね。

Q
挿し芽や挿し木した植物を、隣に住む実家に植えてももいいですか。
A

たとえ隣の実家であっても、品種登録された植物を挿し芽や挿し木で増やして他人に譲るのは、種苗法という法律で禁止されています。あくまでご自分の敷地内だけで楽しむようにして下さいね。

Q
バザーやメルカリなどで販売してもいいですか。
A

挿し芽や挿し木で増やした植物をバザーやメルカリなどで販売することはできません。これは種苗法という法律で決められているため、違反すると罰金などが科せられます。

販売はもちろん禁止ですが、購入する人がいるから販売されるということも踏まえ、正規ルート以外での購入はやめましょう。ホームセンターや園芸店に並んでいる正規品には必ずPWなど植物のラベルが付いています。それを目印にしてくださいね。

Q
公園の植栽用に買った草花を、その公園内での植栽用に挿し木・挿し芽をしてもいいですか。
A

種苗法上、個人的又は家庭的な利用とはいえない態様で、育成者権者の許諾を得ずに登録品種の種苗を増殖する行為は、育成者権侵害に当たります。

まとめ

挿し芽や挿し木が成功した時の、芽が出る喜びや根づいたときの達成感は、ガーデニングの醍醐味のひとつです。そしてその先には、「この植物はどんな人が育てたんだろう?」「どこで生まれた品種なんだろう?」といった興味も広がりさらにガーデニングが楽しくなります。

「増やして楽しむ」ことと、「知って守る」こと。どちらも、植物とのより良い関係づくりに役立ちます。ぜひ、あなたもお気に入りの植物で、ご自宅で挿し芽や挿し木にチャレンジしてみませんか。

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