ベランダや玄関で鉢植えで育てている紫陽花(アジサイ)、そろそろ植え替えが必要かもしれません。ここでは、紫陽花(アジサイ)の植え替えタイミングの見極め方や植え替えに最適な時期、鉢植えから鉢植えへの植え替え方を詳しく説明します。
紫陽花(アジサイ)に限らず、落葉樹のシュラブ(低木)であればどんな鉢植えにも使える植え替え方なので、ぜひ参考にしてみてください。
植え替えとは
植え替えとは、植物を育てる場所を移すことです。ポットから花壇へ、鉢植えから地植えへ、また鉢植えから鉢植えへ移すことも植え替えと言います。植え替えは、移植と表現することもあり、植物を栽培する上で何度かするお手入れになります。
その中でも、鉢から鉢へ植え替えることを鉢替え呼んだり、鉢から少し大きな鉢に植え替えることを鉢増しと言うこともあります。さらには、地植えから鉢に植え替えることを鉢上げと表現します。
また、植え替えをする上で、よく使われる言葉の1つに根鉢というものがあります。根鉢とは、根と土がひと固まりになった部分のことを指します。今回、植え替え手順を説明する際にも出てくるので、ぜひ覚えてください。
どうして鉢の植え替えが必要なの?
鉢植えで育てると、どうしても土の量が限られ、根を張る体積にも限界が生じます。どんなに肥料をあげていても、土は次第に劣化して、蓄えることができる栄養分は減っていきます。そして、植物が生長するにつれ、根も生長しやがて窮屈になり根詰まりを起こしてしまいます。
地植えで育てているシュラブ(低木)は植え替えの必要はありませんが、鉢植えで何年も育てているシュラブ(低木)は、栄養ある土に入れ替えをするためにも、また根詰まりを防ぐために、目安として2年に1度植え替えをして、伸び伸びと育ててあげる必要があります。
根詰まりを防ぐため
根詰まりをすると根が正常に生長することができなくなり、やがて植物は元気をなくしてしまいます。以下のような兆候があったら、根詰まりをしている可能性があります。
鉢の底から根が多く出ている場合は、鉢の中は既に根がいっぱいになっており根詰まりをしています。
以前は、水やりをすると直ぐに水を吸収していたのに、最近はなかなか水を吸収しない時も根詰まりをしている可能性があります。土の排水性が悪化した場合も水の吸収が悪くなりますが、その場合も土をリフレッシュするために植え替えが必要です。
夏の生育時期に水切れが早くなったと感じたら、根詰まり予備軍です。
地上部と地下部の体積はだいたい比例していると言われています。地上部が大きく生長し、それに比べて鉢が小さいなと感じる時も、やはり根詰まり予備軍です。
鉢の表面の土を少し掻きとって鉢の周囲まで根が混みあっていないか確認しましょう。根が混みあって根詰まりをしているようであれば、植え替えが必要です。
傷んだ根を再生させるため
根腐れをすると、根から酸素を吸収できなくなりやがて植物は衰えます。以下のような症状がみえたら、根腐れの可能性が考えられます。
葉が黄色や茶色に変色したり、ハリがなくなり腐ってきているような場合は根腐れしている可能性があります。
以前は、水やりをすると直ぐに水を吸収していたのに、最近はなかなか水を吸収しない時も根腐れをしている可能性があります。根詰まりの際にもみられる兆候ですが、根が窒息状態に陥っている根腐れをしている状態である可能性も考えられます。
根が腐って植物を支えることができなくなると根元からぐらついてきます。以前はしっかりと根が張っていたのに、ぐらつくようなことがあれば根腐れをしている可能性があります。
根腐れでなくても、株の状態が著しく元気がない場合は、害虫にやられている場合もあるので一度掘り上げて根の状態を観察してみる必要があります。根が白く丈夫な状態であることが確認できたら、そのまま鉢に戻しましょう。根が茶色に変色していたり溶けている場合は、植え替えをしましょう。
植え替え時期
アジサイなどの落葉樹の植え替えは、葉を落とした後の休眠期に行います。関東以西の暖地では、落葉して休眠期に入る11月下旬から翌年の3月頃までが植え替え時期です。紫陽花(アジサイ)はもともと温暖な気候を好む植物なので、寒冷地では、寒さで株が傷まないように、11月下旬から翌年の立春(2月上旬)までに植え替えをするといいでしょう。
休眠期は、樹木の生長が止まっています。植え替え作業は多少なりとも根にダメージを与えますが、この時期であれば、樹木に与えるダメージを最小限に抑えることができます。
ただし、なにかしら根に障害があった場合は、休眠期に限らず植え替えをしましょう。傷んだ根をそのまま放置しておくと、最悪の場合枯れてしまいます。早めにダメージを受けた根を切り取り、植え替えをして救済してください。
コガネムシの幼虫にやられた場合の植え替え方法は、以下を参考にしてください。
植え替え方【同じサイズの鉢に植え替えする方法】
「これ以上大きな鉢にすると持ち上げられない」という方には、今と変わらない鉢サイズのまま来シーズンも鉢栽培を楽しむための植え替え方法をご紹介します。以下を参考にしてください。
植え替え方【鉢増しする方法】
お店で購入してきた鉢植えや、小さな鉢植えで育てている場合は、2回り大きな鉢に植え替えをします。これを鉢増しすると言います。ここでは、鉢植えの植え替えの一番の基本となる鉢増しの植え替え方法をご紹介します。
植え替え所要時間
植え替え所要時間は30分程度です。根がぎっしり回っていてなかなか抜けない場合は、その分時間がかかることもあります。 。直径30cm以上の大鉢の場合は、時間を多めにみておくといいです。
植え替えに準備するもの
鉢植えのシュラブ(低木)を植え替える前に、以下の道具を準備しておきましょう。予め準備しておくことで、鉢増しの植え替え作業を効率的に進めることができます。
ふた回り大きい鉢
ひと回りとは直径3cmになります。ふた回り大きな鉢とは、もともとの鉢サイズが15cmであれば21cm、21cmであれば27cmを表します。
鉢底網、鉢底石
病気や害虫を避けるため、新しい鉢底網、鉢底石のご使用をおすすめします。
培養土
栄養たっぷりの新しい培養土を準備しましょう。病気や害虫を避けるため、新しい培養土のご使用をおすすめします。
移植ごて
ステンレス製でしっかりした作りのものが長く使えておすすめです。移植ごては、鉢から株を取り出すことにも利用できます。土入れは隙間に土を入れる際に役立ちます。
肥料
元肥として、予め培養土に混ぜておきます。マグアンプKの中粒(効き目1年)か大粒(効き目2年)がおすすめです 。
殺虫剤
害虫防除のために殺虫剤を植え替え時に撒いておくと、害虫によるガーデニングトラブルを予防することができます。
土入れ
土を入れる際に使う道具です。大小セットになっている場合が多く鉢に植え替えをする際の必需品です。100円均一でも購入できます。
棒
根鉢まわりに土を均一に行き渡らせるために使用します。鉢底まで届くぐらいの長さがあると作業がしやすく、支柱などが大活躍します。
水やり道具
植え替えが終わったら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷり水やりをします。
木槌(ゴムハンマー)
植物と鉢の間に空気層を入れ、植物を抜く際に役立ちます。
植え替え用の鉢を準備します
根が土から露わになる時間を少しでも短くするために、予め植え替え用の鉢を準備します。
植え替え後に利用する鉢の鉢底穴の上に鉢底網を置き、その上に鉢底石を入れます。鉢底石は、鉢の底が見えなくなるくらいの量を入れてください。
植え替えには、握るとしっかり後がつく程度の湿り気がある土が向いています。すぐに形が崩れるサラサラした乾燥した培養土の場合は、水を混ぜて湿らせましょう。湿り気がある土を使うことで植物を定めた向きに固定しやすくなります。まずは、培養土を2cmほどの深さまで入れましょう。中心部を盛り上げて山型のようになるように土を入れると、後で植物の向きを調整しやすくなります。
2cmほどの深さまで入れた培養土の上に、マグアンプKの中粒(効き目1年)か大粒(効き目2年)を5gほど元肥としてふりかけます。ちょうど根先にあたるその高さに元肥を施すことで、根の生長を効果的に促すことができます。
植物を抜いて根の処理をします
移植ごてを使って、鉢の外周の土に隙間を作りましょう。枝が折れないように優しく中心部に向けて枝を抑えながら、真上から垂直に移植ごてを刺して根を掘り切るようにして隙間を作ります。移植ごてを上下にざくざくと動かしながら、360度一周しましょう。 ここが一番疲れる作業です。
根がしっかり張っていて抜けない場合は、鉢を横に倒して木槌(ゴムハンマー)などで鉢の側面を叩いて鉢と土の間に空気層を作りましょう。鉢と土の間に隙間ができると、1人でも植物を抜くことができるようになります。鉢を割らないように注意して、植物を抜いてください。
抜いた植物の根鉢の肩の土を指1本分落としてください。ノコギリ刃の鎌を使用すると切り落とし作業が簡単にできますが、剪定はさみで切り取ったり、根かき熊手などでそぐこともできます。
植物を植え替えます
根鉢の肩をそいだ紫陽花(アジサイ)を、予め元肥まで準備した鉢の中に置き、角度や向きを定めます。2~3cmのウォータースペースを確保できるように高さを調節し、位置が決定したら上からぐっと抑えます。
土入れを使って、植物の周辺に培養土を入れてください。土の表面にも1cm程の土がかかるようにしてください。
続いて、長い棒で鉢底までつつきながら全体にまんべんなく培養土を入れてください。お鍋の壁に残ったシチューをこそぎ取るような手さばきで360℃かき混ぜてください。そうすることで、底まで隙間なく培養土を行き渡らせることができます。
仕上げに、鉢の外側全面を360°回しながら手のひらで叩きましょう。プラスティックの鉢であれば木槌(ゴムハンマー)で叩きましょう。叩いて土が隙間に沈んだ分だけ培養土を補充します。
最後に、育てる場所に移動してから、鉢の底から水が流れ出るまでたっぷり水やりをしましょう。水やりをして土が減ったら、その分だけ土を足してさらに水やりをして馴染むようにしましょう。水を含んだ鉢を移動するはとても大変です。必ず水やり前に移動を終えておきましょう。
害虫によるガーデニングトラブルを予防するためにも、最後にオルトランなどの粒剤を土の表面に撒きましょう。
植え替えよくあるご質問
アナベルやノリウツギなどの新枝咲きのシュラブ(低木)の場合は、休眠期に剪定をします。休眠期なので、植え替え前に剪定しても植え替え後に剪定しても、植物に対するダメージは変わりません。ただ、植え替え前に作業の邪魔になる枝を切り落とした後、植え替え後に形を整える剪定をすると、植え替え作業が楽になります。参考にしてみてください。
手際よく植え替え作業を進めるには、剪定はさみやノコギリ鎌といった道具を予め準備してください。土を隙間なく入れるための長い棒も必須です。そのひと手間が来年の鉢植えの生長を変えますよ。
土をリフレッシュするためにも鉢植えの植え替え作業は必要ですが、同じサイズの鉢に植え替えをすることもできます。その場合、ひと手間根の処理を施した方がよいので、紫陽花(アジサイ)の植え替え方【同じサイズの鉢に鉢替えする方法】を参考にして植え替えをしてください。
土をリフレッシュするためにも鉢植えの植え替え作業は必要ですが、鉢サイズを調整することでコンパクトに育て続けることもできます。例えば、ラグランジア ブライダルシャワーであれば、購入一年目の小さな鉢サイズのまま育て続けることも可能です。 その場合、ひと手間根の処理を施した方がよいので、 紫陽花(アジサイ)の植え替え方【同じサイズの鉢に鉢替えする方法】を参考にして植え替えをしてください。
植え替え後の注意ポイント
遅霜に気をつけましょう
植え替えが終わり、春が近づき暖かくなると芽は生長に向けて動き始めます。その時に霜にあたってしまうと、花芽が傷み、その年は花がつかない葉っぱだけの株になってしまいます。
特に、早春の遅霜には注意が必要です。芽が動き始めてからは、万が一霜が発生しそうになったら、軒下に移動するかビニールなどのカバーをかぶせて霜対策をすることが大切です。写真は紫陽花(アジサイ)の芽が待ち望んだ春の気候によって、動き始めた時です。
寒くなりすぎない場所に置きましょう
植え替え後は、屋外の寒くなりすぎない場所に置いて育ててください。また、あまりに暖かい場所だと早く花芽がつき遅霜のダメージを受ける可能性があるので、寒風が当たりにくい軒下などが最適です。
生育期になったら肥料をあげ始めましょう
目安として3月頃、芽が動き始めたら肥料やりを再開してください。鉢植えの培養土の量には限りがあるので、生育期(芽出しから葉の色が変わってくるまで)には肥料が切れないようにすることが大切です。3~4月の生育期はN(窒素)主体の肥料をあげて、葉や茎を育ててください。さらに開花期はP(リン酸)やK(カリ)を多く含んだ肥料をあげて、花をたくさん咲かせるように促進し根をしっかり育ててください。
まとめ
鉢植えで育てる紫陽花(アジサイ)は、植え替えはどうしても不可欠なお手入れになります。冬の暖かい日を選んで、2年に一度植え替えをしましょう。アジサイに限らず、落葉樹のシュラブ(低木)であればどんな鉢にも使える基本的な植え替え方法なので、ぜひマスターしてみてくださいね。
PW(ピーダブリュー)は選び抜かれた品種のシュラブ(低木)を多く取り揃えています。来年の花壇計画に悩んだら、ぜひ参考にしてみてくださいね。