海辺に近い地域や、潮風の影響を受けやすい場所では、「植物が枯れてしまう」「うまく育たない」といった悩みが多く聞かれます。その原因のひとつが塩害(えんがい)です。

本記事では、塩害の原因と植物への影響を解説しながら、耐塩性に優れた植物の選び方おすすめの植物をご紹介します。海風の中でも美しく育つ庭を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。

塩害とは?植物が枯れる原因に

塩害塩生植物

塩害とは、空気中の塩分(主に海からの潮風)が植物に付着したり、土壌や水に蓄積されたりすることで、植物の生育に悪影響を及ぼす現象です。潮風に運ばれるだけでなく、台風や高潮による冠水によるものもあります。また、塩害という言葉は、植物だけでなく建築物やコンクリート構造物の腐食などの被害にも使われます。

主な原因

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海からの潮風による葉面の塩分付着

植物の葉に塩がつくと、浸透圧の影響で水分がどんどん蒸発し、最終的に枯れてしまいます。

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塩分を含んだ雨水や灌水による土壌中の塩濃度の上昇

植物の根は、通常は土壌中の水分を浸透圧の差によって吸収しています。土壌の塩分濃度が上昇すると、根の中よりも土のほうが「濃い」状態になり水分や栄養分を吸収できなくなります。

塩害が植物に与える影響

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葉がしおれる、変色する、枯れる

ナトリウムや塩素などの塩分イオンは、過剰になると植物細胞内のイオンバランスが崩れ、生理障害が発生します。

2
元気がなくなり、生育不良

根から水分や栄養分を吸収できなくなると、植物は生育不良になります。

3
花付きや実付きが悪化

栄養や水分を十分に吸収できなくなった植物は、花付きや実付きも悪くなり、農作物に被害を与えます。

沿岸部では、これらの影響が年間を通じて断続的に発生するため、植物を選ぶ際には「耐塩性」が非常に重要なポイントになります。

塩害に強い植物の特徴とは?

塩害に強い植物(耐塩性植物塩生植物と言います)は、以下のような特性を備えています。代表的な例は、マングローブやアイスプラントです。これらの特性に近い植物を選ぶことで、潮風の中でも緑を絶やさない、美しい庭を実現できます。

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根が丈夫で、塩分を含んだ空気・水・土壌でも正常に生育できる

細胞内に高濃度の塩分を蓄えることができ、塩害の被害を最小限に抑えることができます。

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葉が厚くて光沢がある(クチクラ層が発達)

クチクラ層の発達により、塩分吸収を抑え、葉からの水分の蒸散を防ぐはたらきをします。

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塩分を葉から排出する能力を持つ

根から吸収した過剰な塩分を、葉から排出する仕組み(ブラッダー細胞)を持っています。

塩害の被害に合った時の対処法

塩害の被害の可能性がある植物は、まずは葉に付着した塩分を取り除くために、水で洗い流しましょう。続いて、石灰資材などを使用して土壌中のナトリウムを取り除きましょう。

おすすめの塩害に強い植物

こちらは、アメリカのPW(PWNA)社によって試験された塩害に強いとされる植物たちです。少しでも参考になればとご紹介させていただきますが、2025年現在日本での試験は実施しておりませんので、ご了承ください。

ベロニカ ウィザーディング

分類:オオバコ科ベロニカ属

ベロニカ ウィザーディングは、立ち性で穂状に花を咲かせるベロニカで、一般的なベロニカよりも耐病性・耐塩性に優れていると言われています。翌年の花を咲かせるために冬はしっかりと寒さにあてましょう。

ロシアンセージ デニムレース

分類:シソ科ペロブスキア属

ロシアンセージ デニムレースは、淡いラベンダーブルーの花とシルバーリーフの魅力的なコントラストを奏でます。暑さ・乾燥に強く丈夫な多年草で、塩害の被害を受けにくいと言われています。

セダム モコランド

分類:ベンケイソウ科マンネングサ属

異次元の高密度咲きで、今までにないぎっしりとしたドーム状の草姿を魅せるセダム モコランドは、多肉植物です。多肉の葉で比較的高濃度の塩分を蓄えることができると言われています。

ユーフォルビア ダイアモンドフロスト

分類:トウダイグサ科ニシキソウ属

強健なPWのユーフォルビアは、比較的塩害にも強いと言われています。夏の暑さや乾燥にも強く、一度植えると春から晩秋…それどころかなんと霜が降りるまで花を楽しむことができます。

まとめ

塩害は、海からの潮風や塩分を含んだ土壌によって植物が枯れてしまう大きな原因のひとつです。しかし、適切な対策を講じ、耐塩性のある植物を選べば、沿岸部や塩害の心配がある地域でも、美しく元気な庭を育てることは十分に可能です。おすすめの耐塩性植物を参考にして、ぜひ自分らしいガーデンづくりに挑戦してみてください。