マーガレットやマムなどの様々なキク科の植物やバラが感染しやすいと言われている根頭がんしゅ病(根頭癌腫病)。ガーデニングをしていると頭を悩まされる病原菌の1つです。

病名からイメージすると、とても怖い病気だと思われがちですが、根頭がんしゅ病は空気感染する可能性は極めて低く、十分に注意すれば感染を防ぐことができます。ここでは、根頭がんしゅ病の特徴と具体的な予防方法や対処法をご紹介します。

根頭がんしゅ病とは

植物が病気に感染する病原菌には、1.カビ(糸状菌) 2.細菌 3.ウイルス 4.微生物 がありますが、根頭がんしゅ病の病原菌は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)という細菌の一種です。

双子葉植物に感染する特徴を持ち(イネ科の植物など単子葉植物には感染しません)、生育温度は14~34℃で、春になり暖かくなってから症状が見られる場合が多くあります。

pH5.7~9.2の土壌で生育し、51℃の高温に10分間さらすと死滅します。

根頭がんしゅ病の症状

キク科、バラ、果樹など多くの植物に感染します。

キク がんしゅ病

初期段階には、地際部付近の茎や根に白いこぶができます。注意して見ると、根元や茎にこぶを確認することができます。

それが徐々に拡大して、褐色~黒色のがんしゅ(こぶ)に生長します。根頭がんしゅ病に感染してもすぐに枯れることはありませんが、栄養分が植物全体に行き渡らず葉が黄色に変色したり茎がよじたり、生育力が徐々に低下していきます。

根頭がんしゅ病の予防方法

根頭がんしゅ病は、カビ(糸状菌)とは違い、胞子などを作らないため空気伝染による感染は極めて少ない細菌です。根頭がんしゅ病の病原菌は、傷口から侵入します。

傷口がなければ感染しない細菌ではありますが、冬の土壌下や周囲の植物を掘りあげる時など、意図せず傷口を作ってしまう可能性もあります。

1植え替えや掘り上げの際に根を切ってしまう時
2花がら摘みや切り戻しによって茎を切る時
3挿し木(挿し芽)を採取する際に茎を切る時
4切り花の収穫の際に茎を切る時
5冬に土壌の凍結や融解を繰り返すことで根を切ってしまう時

上記を踏まえ、根頭がんしゅ病の感染を防ぐために、以下のことに注意して予防しましょう。

1
新しい培養土で苗を育てます

なるべく新しい培養土で育てましょう。もしくは、根頭がんしゅ病を殺菌消毒した土壌で苗を育てます。アグロバクテリウムは、51℃以上に 10分間さらすことで死滅します。よって、60℃程度の熱水に10分以上さらす熱消毒が有効です。
夏場であれば、遮光性の高い黒いビニール袋などに入れて密封をし、1週間ほど日なたで放置すると同じ消毒効果を得ることができます。
熱消毒
培養土が入っていた裏が銀色の袋を使うとたくさんの土を入れても破れにくく便利です。

また、オスバンなどの逆性石けんを3,000倍に希釈した液を1ℓ土壌に混ぜる消毒方法もあります。

2
有機土壌で苗を育てます

消毒された土壌では天敵となる菌も一緒に殺菌されてしまっています。そこで、有機堆肥や有機肥料を混ぜて有機土壌に傾けてください。有機土壌のもとでは、根頭がんしゅ病の細菌は天敵に捕食され、防除することができます。

園芸道具を消毒します

1
園芸はさみを使う前に消毒します

園芸はさみ剪定はさみの消毒方法

花がら摘みや切り戻し、挿し木(挿し芽)を採取する時や切り花を収穫する際には、あらかじめはさみを消毒してから使いましょう。根頭がんしゅ病だけに限らず、切り口から細菌やウィルスの感染するのを防ぐことができます。

2
ガーデングローブ、スコップを消毒します

ガーデニング入門 道具
植え替えや掘りあげの際に利用するガーデングローブやスコップに病原菌が付着している可能性もあります。病気の苗や土壌のお手入れをしたら、園芸はさみを消毒する方法で、ガーデングローブやスコップも消毒するようにしましょう。

根頭がんしゅ病にかかったら

根頭がんしゅ病の細菌は、植物の維管束に潜んでいます。細菌は植物全体に行き渡っているので、残念ながら一度根頭がんしゅ病に感染したら治療する方法はありません。

苗は処分しましょう

心苦しいとは思いますが、他の植物への感染を防ぐためにも、発見した時点で感染した苗を処分しましょう。処分した苗はビニール袋に入れて廃棄してください。

【鉢植えの場合】土と鉢も処分しましょう

土壌も感染しているため、処分しましょう。素焼きやテラコッタなどの鉢の場合は、鉢の素材の奥深くまで細菌が浸透している可能性があります。再発防止のためにも鉢も処分をすることをおすすめします。

お気に入りの鉢でどうしても処分が惜しまれる場合は、60℃以上の熱水で10分以上煮沸するか、100倍液に希釈したキッチンハイターに2分間つけ置きをして殺菌しましょう。その場合、やけどの恐れがある他にも、鉢が変形したり漂白されてしまう可能性もあるので十分に注意して作業をしてください。

また、アルコール濃度70%以上を保った状態で殺菌の効果があります。アルコールはどんどん気化して濃度が下がっていくので、希釈したキッチンハイターは作り置きはせずにすぐに利用するようにしましょう。逆に使用済の希釈したキッチンハイターは、ある程度放置をして蒸発させて濃度が薄まってから処分すると環境に優しく配慮されます。

【地植えの場合】土壌を消毒しましょう

地植えで苗を育てている場合などは、根が張っていた部分の土壌を処分してください。その上で、オスバンなどの逆性石けんを3,000倍に希釈した液を1ℓ土壌に混ぜて消毒すると安心です。さらに消毒した土壌には、有機堆肥や有機肥料を混ぜて有機土壌に傾けて根頭がんしゅ病の細菌を防除してください。

根頭がんしゅ病よくあるご質問

Q
がんしゅ病の症状であるこぶが見られます。こぶの部分を取り除けば良いでしょうか。
A

がんしゅ病の細菌は、植物の維管束に潜んでいます。そのため、こぶ(癌腫)を取り除いても細菌を取り除くことはできません。他の植物への感染を断絶するためにも廃棄処分をおすすめします。

Q
購入したばかりの花苗。がんしゅ病の症状がみえるのですが、まだ満開で手放すには惜しいです。なんとか楽しむことはできないでしょうか。
A

他の植物への感染を断絶するためにも廃棄処分をおすすめしますが、感染してもすぐに枯れてしまうことはないので他の植物から隔離して育てることも可能です。少し楽しみたい場合は、参考にしてみてください。

マーガレットがんしゅ病

4月下旬、がんしゅ病のこぶを切り取り他の植物から隔離して育て始めました。

マーガレットがんしゅ病

9月上旬の様子です。立派な株に生長しました。

マーガレットがんしゅ病

9月下旬には花もちらほら見えるようになりました。

まとめ

根頭がんしゅ病は、感染しないように予防することが何よりです。根頭がんしゅ病に限らず多くの病原菌の予防にも有効な方法なので、是非日頃からガーデニング道具は殺菌消毒をするように心がけてください。

PWは皆さんに「育つよろこび」を伝えます。ガーデニングで他にお困りのことがあったら、ガーデニング入門を参考にしてみてくださいね。