園芸店やホームセンターの店頭で、白地に「PW」と書かれたポット苗を見かけたことはありませんか? スーパーチュニアやスーパーベル、最近は「ラグランジア ブライダルシャワー」など人気品種も多く、すでに庭やベランダで楽しんでいる方もいらっしゃるはずです。ところで、「PW」っていったい何でしょう?

今回は、普段何気なく手にしているPWの苗について少し深く紹介してみます。
これまで同じように見えていた苗にも様々な背景やコンセプトがあるのを知ることで苗の選び方もきっと違ってくると思います。

PW(プルーブンウィナーズ)のコンセプト

人気カリブラコア「 スーパーベル ダブルミルクレープ」。園芸売場でおなじみの「PW」マークのポットが目印です

「PW」の正式名称は、「PROVEN WINNERS(プルーブンウィナーズ)」。日本語に訳せば「証明された勝利者たち」です。
勝利者とは誰のことなのか? そのことを知るために、まずはPWの歴史を振り返ってみましょう。

PWの成り立ち

PWロゴ

PWは1992年、アメリカやヨーロッパ、日本など世界の園芸種苗会社7社で発足しました。発足の大きな目的は、「世界中の育種家が生み出す、優れた園芸品種を紹介すること」です。

園芸品種の産みの親「育種家」たち

毎年店頭に並ぶ新品種の背景には、多くの育種家の努力があります。園芸植物には、美しさだけでなく、育てやすさも大切です。育種家はそのために、ぼう大な数の品種の交配・選抜を繰り返し、「これまでにない植物」の開発を追求しています。

育種家の新しい“たからもの”を世に広めるPW

しかし、どれだけ優れた品種も、商品として安定供給ができず、ガーデニングファンの目にとまるようにPRしていなければ消えていきます。PWは、そうした育種家の新しい“たからもの”を集め、グローバルに紹介することを目指しました。
設立当時は小さなグループで、たった4品種からのスタートでした。しかし、その時に掲げたこのPWのコンセプトは、これまでの種苗業界の常識を覆すインパクトを持つもので、今も変わらず引き継がれています。

1万分の1品種の奇跡!

ユーザー目線に立った商品開発を徹底

PWのメンバー企業は、発足時の7社から、現在は欧米を中心に20社まで増えました。メンバーはそれぞれの地域の育種家が開発した新品種を集め、気候条件が違うアメリカ・ドイツ・日本での試験栽培を経て、PWブランドで発売します。

発売までには厳しい試験が行われます。スーパーチュニアの場合、交配で10,000種類の個体が生まれたら、育種家が厳選してPWグループに届く数は50~100ほど。PWメンバー企業はそれをさらに試作、厳選して品種として世の中に出るのは1品種あるかどうかです。

世界各地で温室内の生産試験、屋外での環境耐性試験を2年以上繰り返し、品種特性を検証。美しい花を咲かせても、環境に適さないものは振り落とされます。結果、スーパーチュニアの新品種として発売されるのは、何と10,000分の1品種!

この選び抜かれた品種こそが「証明された勝利者たち」であり、ガーデニングファンの「安心の証」です。それが世界的なネットワークで販売され、育種家に利益が生まれて次の新品種開発が進み、私たちユーザーは新しい園芸植物を楽しむことができます。

ユーザーにとって、より良い品種を作り、私たちが買った1ポットが次の品種を生み出す可能性を作っていく――。そんな育種の好循環を生み出すネットワークがPWなのです。

PWの品種はどうやって開発されているの?

アジサイのイメージを覆したPWの「ラグランジア ブライダルシャワー」

この奇跡の1品種を生み出すPWの育種には大きな特徴があります。一般的に植物は、科・属・種・品種の順に分類されます。通常私たちが品種改良と呼ぶのは、一番小さい単位の品種どうしの交配です。

しかし、PWの多くの育種家は品種の上のカテゴリーである「種」と「種」(種間交雑)、あるいはさらに上の「属」と「属」(属間交雑)の新しい組み合わせによって、「ハイブリッド品種」を作り出し、植物の新たな性質を引き出します。種間交雑(違う種の交配)は、通常の品種改良と比べると、より高度な技術と知識、長い時間を要します。

なぜそうするかといえば、ハイブリッド品種は、それぞれの親の良さを受け継ぐため。例えば、花はきれいでも暑さに弱い「種」と、暑さに強くても花が地味な「種」の交配を何千、何万回と繰り返すと、ごくまれにきれいな花を咲かせて、かつ酷暑にも耐え、長く咲く新しい植物が生まれるのです。

日本のアジサイと西洋アジサイの種間交雑によって、これまでの6倍以上の花を咲かせるアジサイが誕生

例えば「ラグランジア ブライダルシャワー」は、日本に自生するアジサイと、西洋アジサイの種間交雑によって生まれました。西洋アジサイは華やかな花を咲かせますが、枝の先端にしか花をつけません。

これまで出会うことがなかった2つの種が掛け合わされたことで、ブライダルシャワーは西洋アジサイの華やかさを持ちながら、先端以外のすべての側芽も含めて花を咲かせるようになり、結果的にこれまでのアジサイの6倍以上の花を咲かせるようになりました。

PWを支える日本人の育種家
PW育種家坂嵜さん

PWでは、日本人の育種家も大活躍しています。育種家の坂嵜 潮さんは、数々の有名品種を生み出し、日本のガーデニングの土台を品種力で確立してきた功労者。これまでにスーパーチュニア ビスタやカリブラコア(というジャンル自体)も坂嵜さんが開発しました。世界の園芸ファンに広く楽しまれる園芸植物が日本人の手によって作られたのは嬉しいですよね。2018年に発表したアジサイ「ラグランジア ブライダルシャワー」は、英国王立園芸協会主催のチェルシー・フラワー・ショー2018の新品種部門で金賞を獲得し、「アジサイの新しいカテゴリーを創った」とまで絶賛されました。一人の育種家の努力から生まれた品種が、世界の園芸トレンドを左右することもあるのです。

自然環境にも優しいPW品種

また、PWの品種は、タネがつきにくいように改良されています。その理由は大きく分けて2つあります。

  1. 花を長くたくさん咲かせるエネルギー確保のため

    ひとつめの理由は、エネルギーをタネに使わないので株が充実して、植物がイキイキと生育するから。結果、花が何度もたくさん咲き、長く楽しめるようになっています。

  2. 自生の生態系を脅かさないため

    大切な2つめの理由は、タネが勝手にこぼれて、生態系を脅かさないようにするため。園芸品種はあくまで人が園芸を楽しむためのものなので、改良された強健な品種が自生している植物を侵食しないように自然を守ることも、PWの大切な使命です。もちろん100%タネができないわけではありませんが、自然への影響を最小限にするよう環境にも配慮されています。

PWは植物の国際ブランド

アメリカの街かどに設置されたPWの看板

北米では、すでにPWは多くのファンに愛され、「植物ブランド」としての地位を確立しています。街中を車で走っていてもPWの看板があったり、園芸店には多くのPW品種が並んでいます。

じゃあ、PWはアメリカのブランド?と思う人もいるかもしれません。確かに、アメリカで最初に販売を開始し、すでに有名なブランドになっているのですが、本社がどこかに存在するわけではなく北米、ヨーロッパ、アジアの3つの地域で独立して運営される、とてもユニークな組織なのです。

海外園芸店のPW苗コーナー

PWブランドとして販売される品種は、世界中の育種家とPWに加盟するグループ全体で品種開発、性能評価を行いますが、地域によって気候や住居環境は違い、「ステキ!」と思われる花の色や形も異なります。そのため、環境や人々の好みに応じて販売品種が国ごとに決められるという仕組みになっています。

アメリカでは好まれる花色で販売されても、日本では販売されない、またはその逆のこともよくあります。ただし、植物の品種性能は世界各国で国際的に試験済。それが「植物の国際ブランド」たるゆえんなのです。

PW発足時からのメンバー「ハクサン」

日本では、1992年のPW設立にアジアで唯一関わった株式会社ハクサン(愛知県日進市)が、PWを日々運営しています。ハクサン(旧称・白山貿易)は1981年に設立された種苗会社で、当時はまだ社員数名の小さな会社でした。しかし、1983年頃に品種導入したデンマークカクタス(ハクサンが名付け親)のヒットを皮切りに、ヨダーマムやポールエッケ社のポインセチアなど海外の人気品種を日本に導入しました。

話題の黄色いポインセチア「イエロールクス」も、ハクサンによって2020年秋に日本での販売が開始しました。

今では広く知られているインドアグリーンの定番植物「シュガーバイン」も、実はハクサンの品種なんですよ♪

近年は毎年70品種ほどを世に送り出しており、種苗登録品種の累計数(※)は国内最大級となっています。また、優れた花の新品種を選ぶ「日本フラワー・オブ・ザ・イヤー」を3年連続で受賞するなど、品種性能にも国内屈指のこだわりを持っています。
※ハクサン、J&Hジャパンによる1986年以降の農林水産省種苗登録品種数

PW品種とハクサン品種の違い

「じゃあ、ハクサンの品種とPWの品種の一番の違いって何?」と思いますよね。

簡単に言うと、PW品種は日本を含む世界各国で選抜された超エリート品種たち。庭やベランダで育てるために開発された「ガーデニング向けのスーパー品種」ですね。

一方、ハクサンはガーデニング用途以外の幅広い植物、例えば室内で楽しむ観葉植物やシクラメン、ポインセチアのような鉢物も含めて取り扱っています。海外育種会社とハクサンで日本のユーザー向けに国内テストを行い、珍しい花、葉の模様、株の形、香りなど、さまざまな特性をもつ品種を開発しています。ハクサン品種はまさに「幅の広さ」が特長なのです。

ハクサンメンバーの想い

PW以外にも多くの品種を販売しているハクサンですが、ハクサンで働くスタッフにとってもPWは特別な存在。植物を通して感動をお届けするという共通の目的のために、世界中の育種家や企業と会社の枠を超えて共に品種を開発するという、他にはない仕組みだからです。ハクサンの社員もPWグループの一員として誇りに感じるとともに、日々ワクワクしながら品種を開発しています。

園芸植物の魅力をもっと伝えたい――。そんな情熱を持ったチャレンジ精神は、現在のハクサン社員にも受け継がれています。農業や農学を学んだ社員だけでなく、WEBやデザインの仕事を担当する社員にも共通するのは「花が好き!」なこと。

大好きな花をユーザーのみなさんに楽しんでもらうために、営業部やテクニカルサポートでは農家の安定生産・苗品質を支援。業務部は国内外の連携を図り、企画部ではPWをはじめとする苗の魅力や特性をWEBや商品販促ツールなどで発信しています。

ハクサンのスタッフとおすすめPW品種を紹介!

日本の園芸売場にPW苗がずらりと並ぶのは、ハクサンのスタッフの皆さんの努力のたまもの……、ということで!ここからは、ハクサンのスタッフの皆さんを、お気に入りのPW品種とともにご紹介します!

カタログや販促物などのデザインを担当する安井祥子さんのおすすめは「 スーパーベル ダブルミルクレープ」。世界20ヵ国以上で販売されている大人気のカリブラコアの新色です。淡く優しげなイエローの花色で、優しい笑顔の安井さんならではのチョイスですね。

種苗の研究開発を担当する安藤奈央惠さんが選んだのは、昨年登場したアジサイ「ラグランジア ブライダルシャワー」。”アジサイの概念を変えた”とまでいわれる新規性のある品種を選ぶあたりが、研究開発者ならではの目線です!

笑顔がさわやかな営業担当の芝崎俊介さんのイチオシは「スーパーアリッサム フロスティーナイト」。グランドカバーや花壇の縁取り、寄せ植えなどさまざまなシーンで楽しめます。花が少ない真夏にはグリーンとしても観賞できる、芝崎さん同様マルチに活躍するアリッサムです!

知的な雰囲気の営業担当、塚田英樹さんのお気に入りは、マンガベ「フレックルアンドスペックル」。ちょっと舌を噛んでしまいそうなネーミングですが、こちらはマンフレダとアガベの属間交雑によって誕生した新ジャンルのハイブリッド多肉植物です。選ぶ植物もなんだか知的な雰囲気ですね。

WEB担当の飯塚雅子さんのおすすめは「姫ライラック ペンダ」です。いわゆるシュラブ(低木)で、繰り返し咲いてくれ、家周りの植栽や、コンパクトで小さなスペースや鉢植えなど楽しむ場所を選びません。優雅なライラックの香りと彩りを何ヵ月もの間楽しめるのも大きな魅力です♪

営業の福島 周さんは、安井さんと同じくカリブラコア・スーパーベルシリーズの新色「スーパーベル ホーリーフレア」をチョイス。イエローとレッドのバイカラーの花色はパッションあふれる力強い印象。情熱的な営業マンならではのセレクトです!

PWの品種の幅広さもさることながら、スタッフの皆さんが選ぶ植物が、それぞれの人柄となんだか似通っている感じも面白いですね♪ きっと皆さんも、知らず知らずにご自分に似たお花を選んでいたりするのかもしれません。ぜひPWの中から、「これって私っぽい?」と感じるお花を探してみてはいかがでしょう?

届けたいのは「育つよろこび」

ハクサンが日本でのPW展開のテーマにしているのは、「育つよろこび」です。

「『育てるよろこび』じゃないの?」と思う方がいるかもしれません。園芸植物と付き合うとき、みなさんはどんなことに「よろこび」を感じるでしょうか?

植物が毎日育って、きれいに花が咲いたときは、もちろんうれしいですよね。でも、うまく育たないときは? 植物は苦しくてもしゃべってくれないので「どうして調子が良くないのかな?」と一生懸命観察したり、他の人の体験を見たり聞いたりして「こうすればいいんだ!」と気付くことも楽しいものです。

植物を愛でたり、栽培に悩んだりするなかで、これまでより上手に咲かせられるようになっていくと、植物を育てている私たちも育っていきます。生き物を通してそんな感動を味わえることは、園芸の他にあまりないかもしれません。「育つよろこび」という言葉に込められた思いは、「植物とともに私たちも育つ」ということなのです。

PWではそのために、世界中の育種家と日々品種開発を進め、みなさんにこれからもワクワクしていただける植物を届けていきます。WEBやSNSでの情報発信でファンの交流にも力を入れているので、育て方に迷ったときはぜひ日本中の仲間に聞いてください。PWの苗で、花好きの輪を広げていきましょう!