日本最大級の花のテーマパークとして全国に名を馳せる「なばなの里」。有名旅行サイトが実施する「外国人に人気の観光スポットランキング 2017」では、東海地区で唯一ランクイン。いつ訪れても花々が絢爛に咲き誇る風景が、世界中の旅行者を魅了しています。開園当時から花卉園芸課で活躍されている山口さんに、記憶に残る花壇づくりの秘訣をお聞きしました。
ブランド苗を使わなくてもいい庭は作れると思っていました
PWと出会い、春先の長雨と梅雨をこえ夏でも美しさが衰えないこの品種には、園芸歴20年の私も驚きを隠せませんでした。
目にした瞬間の驚きはもちろん、時間を経ても鮮やかによみがえる感動を
当園では、日本最大級の「花ひろば」や「ベゴニアガーデン」のほかにも、バラ園や梅苑、あじさい・花しょうぶ園など、エリアごとにテーマを設けています。私が担当するのは、各エリアをつなぐ遊歩道沿いの花壇がメイン。チューリップやベゴニアのように主役の花を愛でるというより、散策しながらさまざまな花が織りなす風景を楽しんでいただく場所です。
春夏は一面に広がる花畑、秋冬はイルミネーション。1年を通してお客様が訪れる施設のため、どの季節も花を絶やさないことを心がけています。加えて、広大な敷地面積をいかしたダイナミックかつ大胆な色づかいで、お客様の記憶に残る景色をつくりだすことが私の目標。目にした瞬間の驚きはもちろん、時間が経っても鮮やかによみがえるような感動を残したい。そのために大切なのは、やはり色のインパクトです。以前は、園内全体に統一感をもたせ、どこのエリアもカラフルな色づかいの植栽にしていました。ところがお客様からは、『どこも似かよった雰囲気』『変化がなくておもしろみに欠ける』という予想外の反応が。この声を参考に、思い切って統一感をリセット。今までとは発想を変え、ここはイエローのゾーン、ここはピンクとパープルのゾーン…という感じで、エリアごとに個性を表現してみたんです。その結果、行く先々で目に映る色彩が変化し、新鮮な印象を受ける花壇になったと思います。
一つひとつの花に愛着があるからこそ、それぞれの個性や美しさを際立たせたい
ひとつのエリアに使用する色は、せいぜい3色か4色。色数が少なくシンプルな分、一つひとつの花の色味、形のインパクトは重視します。最近、注目している品種のひとつが、PWの「トレニア・ルミーナ」のレモンイエロー。ほかにはない透明感のある色味が気に入って仕入れた品種です。私の場合、魅力的な品種をメインにして全体のデザインを考えるパターンが多いのですが、これもまさにそう。爽やかなレモンイエローを主役に、オレンジ寄りの濃い黄色や、黄色に近いライムグリーンの花を添えたんです。すると、同系色でも単調にならず、美しい濃淡がうまれました。“1+1=2”という単純な配色ではなく、お互いの色を引き立て合い、何倍もの魅力を放ってくれる品種は重宝しますね。一つひとつの花に愛着があるからこそ、それぞれの個性や美しさを引き出せた時は手ごたえを感じます。
また、複雑な造形の花や、珍しい品種も積極的に取り入れています。例えば、小さな花びらが緻密に絡み合うPWの「メカルドニア」は、『このお花、初めて見た!』というお客様が多く、評判も上々。『売店で手に入りますか?』とよく聞かれます。植栽担当者として大変うれしい質問なのですが、園内で真っ盛りの品種の場合、苗の販売は終了していることがほとんど。ですので、花の名前や出回る時期をお伝えして、翌年に楽しんでもらえるようアドバイスさせてもらっています。
コスト以上のパフォーマンスを発揮し、ブランド苗の概念を変えたPWとの出会い
実はPWに出会う前まで、ブランド苗を使わなくても、いい庭は作れるという信念があったんです。PWは暑さや雨に強いという説明を聞き、試しに1度使ってみて、その固定概念は吹き飛びました。
ここ三重県桑名市は、中部地方特有の高温多湿な気候。最も苦労するのは春先の長雨と梅雨で、花にとって一番いいシーズンにトラブルが起きやすいのが悩みでした。ところが、PWの品種は長雨に打たれても痛みが少なく、過酷な暑さが続く8月でも生育旺盛。発色も落ちることなく鮮やかに咲き続けていたんです。これには園芸歴20年の私も驚きを隠せませんでした。
PWを導入する前は、GW明けに植えた苗が、夏休み前に枯れてしまうこともありました。真夏の炎天下の中、新しい苗に植え替えるのは骨が折れるもの。なにより自分の知識やリサーチ不足によって、お客様に楽しんでもらえないことが悔やまれました。PWに出会ってからはそういった問題も改善され、セルフクリーニングなので管理がずいぶんラクに。花の高さを調節するなど、より美しい状態を保つためのメンテナンスに時間を割けるようになりました。
私たちの仕事は、お客様に喜んでいただくことがすべて。そのためには多少のコストはかかっても、最大限のパフォーマンスを発揮してくれる品種を選びたいと思っています。もっともPWの場合は、コスト以上の価値を感じていますけどね。これからも、感度の高いお客様に満足してもらえるよう、新しい品種やカラーを積極的に取り入れていきたいです。
※掲載内容は2017年11月時点の情報です。
インタビュアー
「なばなの里」花卉園芸課 係長心得 山口 悟郎さん
農業高校を卒業後、1985年に長島観光開発へ入社。
本社にて造園事業に携わった後、1998年の「なばなの里」開園とともに現在のポジションへ。約20年にわたって園内の花壇づくりを担当。
施設のご案内
「なばなの里」は、三重県桑名市のナガシマリゾートにある花のテーマパークです。春はチューリップ、秋はダリアやコスモスが咲き乱れる13,000坪の「花ひろば」、世界各国から集めた数百種・12,000株の花を常時展示する「ベゴニアガーデン」など、年間を通してさまざまな花を楽しめます。10月〜5月初旬に開催されるイルミネーションも有名です。
住所 | 三重県桑名市長島町駒江漆畑270 |
営業時間 | 平日 10:00~21:00 土日祝 10:00~22:00 営業時間は、季節により変更します。詳しくは公式ホームページを参照ください。 |