牧歌の里 PW

岐阜県北西部の奥美濃エリアに位置する「ひるがの高原」。白山連峰や大日岳などの山脈を背景にした標高1,000メートルの場所に、花と緑のテーマパーク「牧歌の里」はあります。遅い春の訪れや、紅葉シーズンから始まる積雪など、独特の自然環境と向き合いながら、約20年にわたって花畑を切り盛りする農園部の高田さんにお話を伺いました。

手間をかけなくても見応えがあり、手間をかけるほど、美しさが増す。その“のびしろ”がPWの魅力

PWと出会い、春先の長雨と梅雨をこえ夏でも美しさが衰えないこの品種には、園芸歴20年の私も驚きを隠せませんでした。

々を借景にした花壇づくりの秘訣は、鮮明な印象を残す「色づかい」

当園の花畑は4.5haあり、5月の連休から約2週間はチューリップ、6月中旬から8月上旬にかけてラベンダー、以降11月まではスーパーチュニアやマリーゴールド、サルビア、バラなどが次々と咲き乱れます。春が遅いうえに、夏場は高温多湿。9月中に霜が降りたり、10月後半に雪が降ることもあり、年間を通してベストシーズンは非常に短いんです。そのため、シーズン中はどの時期に訪れても、鮮明な印象を受けるような風景を提供したいと思っています。


私が最も意識していることは、眼前にそびえる山脈を借景にした花壇づくりです。花壇単体の完成形ではなく、大自然に抱かれた風景の中で引き立つ美しさに重きを置いています。その骨子になるのが「色」。花を選ぶ際、品種よりも色を優先するほど大切なエッセンスなんです。花壇の主役になる色を決め、その色が映える全体の配色や植栽の列幅を決め、それからようやく品種を検討します。ありふれた花でも、色づかい次第でどれだけでも魅力を引き出せる。それが花のおもしろさだと思っています。


例えば今年は、はっとするほど発色が鮮やかなPWの「スーパーチュニア ビスタ ピンク」をメインカラーに据えました。ピンクは目立つので、主張しすぎると逆に印象が弱くなってしまいます。絶妙な列幅に設定し、暖色から寒色へと移ろうグラデーションの中で、差し色として効かせたのがポイントです。

水やりと肥料は最小限に抑え、植物本来の力を引き出す独自の栽培方法

花壇づくりの方針を聞かれ、「基本的に水は与えません」とお話するとたいてい驚かれるのですが、本当に水やりは最低限にしているんです。そもそもは、作業人数が限られている中で、「どうしたら少人数でも管理しやすい環境にできるか」という課題を解決するための対策でした。


私が20年以上におよぶ経験で導き出した答えが、植物を甘やかさず、植物本来の力を高めるという手法です。例えば水やりは、いきなりスプリンクラーを使わず、まずは手潅水で様子を見ながら少しずつ。園内でも場所によって土質が違ったり、日照角度によって咲き方が変わるので慎重に行います。すると次第に根がしっかりと張り、集中的な雨や日照りにも耐えられるように順化していくのです。追肥も最小限で済むし、根元から離れた位置にあげることができます。ある程度は自然まかせで、足りないものを補う「足し算」の考え方ですね。また、ここはもともと牧草地で土壌が優れているわけではないので、畝を作ることで排水を促し、雨が降っても土が流れないように工夫している点も独特だと思います。


料理と同じで、レシピ通りの杓子定規では、花の本当の美しさは引き出せません。その年、その季節の気候や素材(苗)の状態を吟味し、感覚を研ぎ澄ませて花と対話しながら大切に育てています。

独特の環境でもたくましく育つPWの苗
少人数だからこそ、その真価を実感できます

PWとの出会いは2015年のこと。現在は「スーパーチュニア」をはじめ、「スーパーサルビア」や「カレンデュラ パワーデイジー」など14、5種類を使用しています。初めて導入した時、そのたくましさに目を見張りましたね。暑さにも、梅雨や台風にも、とにかく強い。大きな雨粒や泥を受けても傷みにくく、翌日の立ち上がりが早いんです。勢力の強い台風でも持ちこたえた時は、本当に驚きましたね。


また、セルフクリーニングで花がら摘みの手間が省ける分、雑草の処理に時間をかけられると作業スタッフからも好評です。そもそも、しっかりと株張りして一つひとつの苗が旺盛に育つので、土が陰になって雑草が生えにくいんです。不要な労力を省けるので、病気や暑さに弱い安価な苗を仕入れるより、結果的に効率やコストを削減できると思います。私たちのように少人数で管理している施設にとっては、まさに救世主のような存在。本音を言えば、私ももっと早く出会いたかったです(笑)。


手間をかけなくても見応えのある花畑ができるということは、手間をかければもっと素晴らしくなるということ。PWの真の魅力は、その“のびしろ”だと思っています。これからも、新しい知識を学んだり、メーカーさんと情報交換をしてお互いに高め合いながら、私たちの花壇に適した花を積極的に取り入れていきたい。そしていつか、ここでしか目にすることができない品種を一緒に開発し、ひるがの高原の新しい名物に育て上げること。それが職人としての私の夢です。

※掲載内容は2017年8月時点の情報です。

インタビュアー

「ひるがの高原 牧歌の里」園芸部 高田 満浩さん

岐阜県高山市荘川町出身。
農業高校を卒業後、ホテルマンを経て。「牧歌の里」の立ち上げに参加。
1996年の開園に先駆けて、花壇の試験栽培から事業に携わり、約20年にわたって花壇づくりを担当。

施設のご案内

「牧歌の里」は、四季折々の花が楽しめる約4.5haの花畑をはじめ、馬や羊、アルパカとふれあえる放牧場、ものづくり体験、温泉施設を併設したテーマパーク。飛騨牛や奥美濃古地鶏を味わえるバーベキュー、園内で搾った牛乳を使った焼きたてパンなどの高原グルメも人気です。

住所岐阜県郡上市高鷲町鷲見2756-2