花序(かじょ)という言葉、ご存知ですか。植物は種類ごとに花のつき方が決まっていますが、その花のつき方のことを花序と呼びます。

花序の基本を知れば剪定や切り戻しなどのガーデニングのお手入れにも役立ちます。お気に入りの植物がどのように咲くのか、一緒に探ってみましょう!

花序とは

よく見ると、花は自然界の法則に従って規則正しく咲いています。植物は種類によって茎に対する花のつき方(配列)が決まっており、その花のつき方のことを花序(かじょ)と呼びます。

姫ライラックドワーフピンク

花序にはさまざまなタイプがあり多くの種類に分類されますが、中には複数の要素をもち分類がはっきりしないものもあります。

花序がガーデニングに役立つ理由

花序を理解することで、花を美しく咲かせるコツがわかります。たとえば、花が咲き終わったら茎をどこで切り戻すべきかを知ることで、次の花の成長を促進できます。また、植物の成長パターンを知ることで、より効率的な肥料の与え方や支柱の設置が可能になります。

  • 剪定や切り戻しのタイミング
  • 植物がどのように咲き進むかの予測
  • 花を効率よく育てるポイント
  • 受粉効率

花序にまつわる園芸用語

花序の説明をする上で、茎や花の成り立ちに関する園芸用語をまとめておきます。

茎の成り立ちにまつわる園芸用語

花柄と花軸
花茎
花柄(かへい)花を支える茎、花梗(かこう)とも呼びます。花から実になると果梗(かこう)と呼びます。
花茎(かけい)地表から出た花しかつけない茎
花軸(かじく)花序の中央にある茎

花の成り立ちにまつわる園芸用語

花房
頂花、側花
花床
花床(かしょう)花柄の先で花が育つ部分、花托(かたく)とも呼びます。
花房(かぼう・はなふさ)房のようになった花の集まり
頂花(ちょうか)茎の先端につく花
側花(そっか)茎の側方につく花、腋花(ふっか)とも呼びます。

花序の種類と特徴

ここからは、代表的な花序の種類と特徴についてご紹介します。花序が1種類のみのものを単一花序と呼び、複数の花序が組み合わさったものを複合花序と呼びます。

単一花序

単一花序には大きく分けて、下から上に咲いていく無限花序(むげんかじょ)と、花軸の先端に花がついてそこで成長が止まる有限花序(ゆうげんかじょ)があります。ただし、花序の分類と開花順には多くの例外があり一概には言い切れません。

単一花序
代表的な単一花序

無限花序(むげんかじょ)

花柄がついている茎(花軸)の下から上、あるいは中心から外側の順に花が咲き、最後に先端の花(頂花)が咲く特徴があります。総穂花序(そうすいかじょ)とも呼ばれます。

総状花序(そうじょうかじょ)

マメ科(ナズナ、ルピナスなど)、ジギタリス、キンギョソウなど

下から上に向かって、あるいは周辺から中心に向かって咲き進み、花柄の長さがほぼ等しく、花軸に均等に花がつきます。長い円錐形または円柱形に花が並ぶのが特徴です。
ジギタリスジギタリスベリーカナリー
レーマニアレーマニア

円錐花序(えんすいかじょ)

ナンテン、ウツギ、サルスベリなど

総状花序がさらに枝分かれし、それぞれの枝に複数の花がつきます。花全体を見ると円錐状の形をしており、円錐状花序(えんすいじょうかじょ)または複総状花序(ふくそうじょうかじょ)とも呼びます。
サルスベリブラックパールサルスベリ センターステージ
ノリウツギノリウツギ
アルンクス シャンテリーレースアルンクス

穂状花序(すいじょうかじょ)

ケイトウやサルビア、ギボウシ、イネ科、オオバコ科など

総状花序に似ていますが、花柄のない花が穂状に咲き、細い花序がほぼ直立した状態になります。
スーパーサルビアロックンロールスーパーサルビア ロックンロール
ベロニカウィザーディングエバーアフターベロニカ ウィザーディング

肉穂花序(にくすいかじょ)

サトイモ科、ミズバショウなど

穂状花序の花軸が多肉となり、花柄はなく花軸に花が密生したものを肉穂花序と呼びます。
サトイモサトイモ

尾状花序(びじょうかじょ)

ブナ科やヤナギ科など

花軸に花柄のない花が多数、垂れ下がるように密につきます。穂状花序の一種になります。
ヤナギ 尾状花序ヤナギ

散房花序(さんぼうかじょ)

アジサイ属、コデマリ、ペンタス、シモツケ、ナズナ、アブラナ科など

柄のついたたくさんの花が茎から四方に向いて咲くものそれぞれの花が四方に伸びて咲くタイプ。花軸に多くの花がつき、下の方から順に咲きます。下の花柄ほど長く、花柄についた小花はすべて同じ位置に咲くため小花が集まった形は半球状や平面状になります。総状花序(そうじょうかじょ)散形花序(さんけいかじょ)の中間の花序です。
ヤマアジサイタフスタッフヤマアジサイ タフスタッフ
シモツケダブルプレイレッドシモツケ ダブルプレイ

散形花序(さんけいかじょ)

ヒガンバナ科、サクラソウ、ネギ科など

花軸の先端に同じくらいの長さの花柄を持つ花が傘のような形で咲きます。互散花序(ごさんかじょ)とも呼ばれます。
ヒガンバナヒガンバナ

頭状花序(とうじょうかじょ)

キク科(タンポポやヒマワリ)など

花軸の上が大きく広がっており、花柄のない花が多数ついて平らに見える花のつき方をします。1つの花に見えますが、実際はたくさんの花で形成されています。
マーガレット
タンポポ

有限花序(ゆうげんかじょ)

枝の先端から下に向かって咲き進むタイプを有限花序(ゆうげんかじょ)と呼びます。

有限花序(ゆうげんかじょ)の中でも、枝分かれせず、茎の先端にひとつだけ花をつけるものを単頂花序(たんちょうかじょ)と呼び、先端に花がついた花軸の下から次の枝が出て先端に花をつけるということを繰り返す花序を集散花序(しゅうさんかじょ)と呼びます。

集散花序(しゅうさんかじょ)には、1つの節から1本の側枝が出る単集散花序(たんしゅうさんかじょ)と、1つの節から2本の側枝が出るニ出集散花序(にしゅつしゅうさんかじょ)と1つの節から3本以上の側枝が出る多出集散花序(たしゅつしゅうさんかじょ)があります。

単頂花序(たんちょうかじょ)

スミレ、チューリップ、アネモネ、シクラメンなど

地面から伸びた茎が枝分かれをすることなく、茎の先端にひとつだけ花をつける花のつき方を単頂花序と言います。
チューリップ単頂花序チューリップ
シクラメン単頂花序シクラメン クレヨン

扇状花序(せんじょうかじょ)

ゴクラクチョウカなど

各節から1本の枝が出て左右交互に平面的に分枝します。単集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
ゴクラクチョウカ ストレリチアゴクラクチョウカ(ストレリチア)

巻散花序(けんさんかじょ)

ムラサキ科など

各節から1本の枝が出て、平面的な渦巻き状に分枝していきます。鎌状集散花序(鎌型花序)とも呼ばれます。単集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
ミオソティスミオマルクミオソティス ミオマルク

かたつむり状花序

キスゲ科など

同じ方向に分枝しながら花序が立体的な渦巻き状になります。単集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
ニッコウキスゲニッコウキスゲ

さそり状花序

ツユクサ科など

先端に花がついた枝の下から左右交互に直角に分枝します。立体的なのが特徴です。単集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
ブライダルヴェールブライダルヴェール

互散花序(ごさんかじょ)

サクラソウ、ペチュニアなど

花がついた花軸の下から次の枝が出て先端に花がつくということを左右交互に繰り返します。単集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
ペチュニアピンクスタースーパーチュニア

二出集散花序(にしゅつしゅうさんかじょ)

ナデシコなど

各節に2本ずつ側枝が出てその先端に花がつきます。岐散花序(きさんかじょ)とも呼ばれます。
ダイアンサスフルーリアムールモーブシフォンダイアンサス フルーリアムール

多出集散花序(たしゅつしゅうさんかじょ)

トウダイグサ科など

各節に3本以上の側枝が出てその先端に花がつきます。花柄のない花が短い花軸に密集してつく団散花序(だんさんかじょ)も含み、多集散花序(たんしゅうさんかじょ)の一種です。
いい香りの花 花の香りで癒されよう沈丁花(ジンチョウゲ)
ヤマボウシヤマボウシ

複合花序

複数の花序が組み合わさったものを複合花序と呼びます。

同形複合花序

同じ種類の花序が組み合わさったものを同形複合花序と呼びます。花軸から分枝した茎それぞれに散房花序がついているタイプなど、同じ形の花序がそれぞれの茎につくのが特徴です。

異形複合花序

異なる種類の花序が組み合わさったものを異形複合花序と呼びます。散形花序が総状に組み合わさったものなど、こちらもいくつかの花序に分けられます。

まとめ

花序の基本を知ることで、ガーデニングがきっともっと楽しくなります。種類や特徴を覚えながら、自分の育てる植物にどのような花序が見られるかぜひ観察してみてください。一つの花だと思っていたものも「実は小さな花の集合体だった」という場合も多いものです。自分の育てている花がどのように咲き進むのか知り、効率的なお手入れをすることで花々が一層美しく咲き誇りますよ!

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