ボリュームたっぷりに花を咲かせて長く楽しむために、是非覚えておきたいガーデニングテクニックが「切り戻し」と「摘心(ピンチ)」です。両方とも茎を切る点では似ているようですが、その目的や行う時期が少し異なります。

それぞれどんな時にやっておくとよいか「切り戻し」と「摘心(ピンチ)」に最適なタイミングと方法についてご紹介します。また植物を切る点で似ているお手入れ「剪定」についても、その違いをご紹介します。

切り戻しと摘心(ピンチ)の違い

切り戻しも摘心(ピンチ)も茎を切り取るお手入れではありますが、切り戻しは伸びすぎた枝や茎を切って形を整えたり、風通しを良くし蒸れを防いだり再びたくさんの花を咲かせる目的で花後に行ったりします。摘心(ピンチ)は茎の先を切りわき芽を増やす目的で花が咲く前に行います。

切り戻しとは

「そろそろ満開も終わりかな?」という花を再びたくさん咲かせるために覚えておきたいお手入れが、切り戻しです。開花期が長いお花や生長し過ぎた植物に行います。切る場所は、芽や葉の少し上になります。

開花期間が短いお花は切り戻ししないでください

切り戻しをすると2~3週間はお花が咲かないので、開花期間が短いお花は切り戻しはしません。

ひょろひょろと枝が伸びて不格好になってきたり、満開の時期が過ぎて花数が少なくなってきたペチュニアも、ばっさり切り戻して新しいわき芽を伸ばせば、生長の勢いが増し再びたくさんの花を楽しめます。

花が残っていると、勿体ないとか心苦しいと感じてしまいますが、切り戻しをすると、株元の風通しも良くなり1ヵ月もすれば再び花いっぱいの姿に戻ります。新しい葉や花をたくさんつけるために是非切り戻しをしてみてください。

切り戻しの目的

1
樹形を整えます

植物の形やバランスを整えるために、不要な枝や葉を取り除きます。

2
植物の健康を促進します

不要な枝や葉を取り除くことで、植物のエネルギーを届けたい場所に効果的に使えるようにします。

3
病害虫の予防をします

病害虫の発生や増殖を防ぐために、切り戻しを行うことで被害を最小限に抑えることができます。

切り戻しの時期

切り戻しはお花の生育期に行います。お花の生育期であれば「形が乱れてきたな」と感じたら、切り戻しのタイミングです。

春から秋まで長く咲くお花は、梅雨入り前に切り戻しをしてください。元気な葉がたくさん残るようにして、株の1/2~1/3程度まで大きく切り戻します。梅雨入り前に切り戻しをすることで、高温多湿の夏に蒸れるのを防ぎ、風通しよく清潔な状態の株を保つことができるようになります。台風が近づいて来たら、暴風で株の形が乱れる前にコンパクトに切り戻すこともおすすめです。

また、秋まで長く咲くお花は、夏が終わった8月頃にもう一度切り戻しをすると、またぐんぐん生長して秋にたくさんの花を咲かせてくれます。

切り戻し前の事前準備

園芸はさみ剪定はさみの消毒方法

切り戻し前には、園芸はさみを消毒して切り口から病気に感染しないようにしてください。

切り戻しのやり方

株いっぱいに花が咲く開花期が長いペチュニアやカリブラコアは以下を参考にして切り戻しをしてみてください。

満開を過ぎたペチュニアの切り戻し

6月12日 切り戻し前

スーパーチュニアビスタ ペチュニア

枝が混みあって枯れた花も目立ってきたペチュニア(スーパーチュニア)。もっと大きく育てたいので切り戻しをします。

6月12日 切り戻し後

スーパーチュニアビスタ ペチュニア

軽く切り戻しをしてリフレッシュしました。株元にも日が当たるようになりました。風通しも良くなりました。

6月25日

約2週間後には新しい芽が増えて再び花が咲き始めました。株もがっしりと充実してきました。

育ち過ぎたカリブラコアの切り戻し

切り戻し前

スーパーベル カリブラコア

茎が伸びて形が崩れてきたなと感じてきたカリブラコア(スーパーベル)。切り戻しのタイミングです。

切り戻し後

スーパーベル カリブラコア

切り戻したカリブラコア(スーパーベル)。しばらく花が減りますが、すぐにボリュームある姿に回復します。

3~4週間後

スーパーベル カリブラコア

3~4週間後には再び満開になりました!花に充分に栄養が行き渡り、形も整いました。

梅雨入り前のカリブラコアの切り戻し

6月8日 切り戻し前

スーパーベル カリブラコア

育ちすぎて形が崩れてきたスーパーベル。株元が蒸れて枯葉も目立ってきました。植物が蒸れて傷みやすい梅雨前などに行うと効果的です。

6月8日 切り戻し後

スーパーベル カリブラコア

ばっさり切り戻すときも、必ず元気な葉を多めに残すようにしましょう。すっきりして風通しがよくなりました。

7月1日

約3週間できれいなドーム状になりました!このようなきれいな形に整えるのに、切り戻しは是非マスターしたいテクニックです。

花茎が長いお花(ゴンフレナ ラブラブラブバーベナ メテオールシャワーなど)は、草丈の1/2程度の各節の上で、元気な葉を数枚残して切ります。

切り戻しの後は、たっぷりの水やりと肥料やりをするようにしてください。

動画で観るペチュニアの切り戻し

では、実際にペチュニア(スーパーチュニアビスタ ミニシャインパープル)の切り戻しを動画でみてみましょう。初めて切り戻しをする時には勇気が入りますが、お花を風通し良くしてあげるためにも切り戻しに挑戦してみましょう。

切り戻しの注意点

傷口から病気が感染することを防ぐため、園芸ばさみを消毒してから、切り戻しをするようにしましょう。

切り戻しはお花の生育期に行います。夏のお花の場合、涼しくなった秋はお花の生長が終わっており、その時期に切り戻しをするともう花が咲かなくなることがあります。生育期が終わった後は、形を整える程度の切り戻しにとどめておいてください。伸びきった枝などを切り落とすことで、必要な所にだけ栄養が届くようになるので、形を整える目的としては有効です。

切り戻しは、念のためそのお花の生育期や開花期を調べてから行うようにしてください。

切り戻し後の水やりのポイント

切り戻し後は、葉の数が減り水の蒸発量が少なくなるため、必要とする水分量が全体的に減ります。根から吸収する水分も減るために、水のやりすぎには注意しましょう。水やりは土が乾いてからあげるようにしてください。

切り戻したお花の楽しみ方

切り戻したお花の楽しみ方 PW

切り戻したお花は、お花に飾って最後まで楽しむことができます。ただ、切り戻した花や庭で咲いている花は、花屋さんで売られている花とは異なり、茎が短かったり曲がっており、花の向きを調整するのが難しかったりします。そんな切り戻したお花を飾るのに適した花器や、お花の生け方をご紹介します。

摘心(ピンチ)とは

花いっぱいのボリュームある株に育てるための作業が、摘心(ピンチ)です。摘心(ピンチ)は、まだ苗が小さいうちからわき芽の生長を促す目的で行います。切る場所は、わき芽が出る位置の上になります。摘心(ピンチ)を行わないと1本の茎のままですが、摘心(ピンチ)を行うと茎が2本になります。さらに摘心(ピンチ)を重ねると4本、8本と増えていくイメージです。

摘心(ピンチ)の目的

1
分枝を促進します

1本の茎を2本に、さら摘心(ピンチ)を重ねることで4本、8本と増やし枝数の多い株を形成します。

2
草姿を調整します

主軸の生長を止めることで、植物は横方向に分枝を伸ばす傾向があります。摘心(ピンチ)を重ねることで植物の草姿を調整することができます。

3
シュートを強化します

摘心(ピンチ)によって主軸の生長を止めることで、枝や葉の生長や栄養蓄積が促進され、より健康的な植物を育てることができます。

摘心(ピンチ)のやり方

摘心は、茎の先端近くわき芽が出る位置の上を切り取るだけで完了です。こうすると、わき芽が伸びてきます。
摘心(ピンチ)を行わないとひょろひょろと茎が1本伸びるだけの植物も、苗が小さいうちに摘心(ピンチ)を重ねることで、ボリュームある株姿に育ちます。

最初に元気なわき芽があるのを確認しましょう。

わき芽の上で茎をカットします。小さい苗は先端の葉をつまみ取るような感じです。

摘心(ピンチ)が完了しました。

約2週間後の様子です。わき芽が伸びてボリュームアップしました!

剪定とは

アメリカあじさいルビーのアナベル ハイドランジア

植物を切ることを総称して剪定と呼びます。

剪定は、元々は樹木の枝を切り、形を整えたり風通しを良くする事を指していましたが、最近は木だけでなく植物全般に生長のために不要な部分を切るときに使われるようになってきています。

様々ある剪定方法の1つに、切り戻し摘心(ピンチ)が挙げられます。

切り戻しや摘心不要なペチュニア

PW(ピーダブリュー)のペチュニア(スーパーチュニア)やカリブラコア(スーパーベル)は、切り戻しをしなくてもこんもりと茂り、摘心(ピンチ)をしなくてもたくさん分枝するように改良されているため、切り戻し不要!摘心(ピンチ)不要!なお花です。

さらに美しい姿に育てたい方には、切り戻しや摘心(ピンチ)をおすすめしておりますが、しなくてもこんなにきれいに育ちます。切り戻しや摘心(ピンチ)がまだ難しいなと感じているガーデニング初心者の方におすすめのお花です。

よくある問い合わせ

Q
園芸ばさみの消毒方法を教えてください。
A

台所用の漂白剤(キッチンハイターなど)を100倍程度に希釈したもので、2分ほどつけ置きするようにしてください。

Q
たくさんの花を咲かせるには、いつ切り戻しをしたらいいですか。
A

株が傷んでいなければ、梅雨入り前満開の後花が少なくなったら切り戻しをしてください。梅雨入り前は、高温多湿の夏に向けて株が蒸れるのを防ぐために行います。満開の後花が少なくなった時は、再び満開の状態を促すために行います。

Q
秋まだ長く咲くお花を育てています。秋になりましたが、切り戻しをしてもいいですか。
A

生育期が終わった花は、切り戻すともうお花が咲かない可能性があります。生育期が終わった後は、形を整える程度の切り戻しにとどめておいてください。伸びきった枝などを切り落とすことで、必要な所にだけ栄養が届くようになるので、形を整える目的としては有効です。

まとめ

切り戻しと摘心(ピンチ)の大きな違いは、切り戻しは生長しきった株に行うのに対して、摘芯(ピンチ)は生育中の株に行うことです。切る目的が少し違います。

切り戻しや摘心は、慣れるまでは「切ってお花が咲かなかったらどうしよう」と心配になることもあると思います。ただ一回成功すると、驚くほどその効果を実感できるので、ぜひ挑戦してみてください。切り口からの病原菌の進入を防ぐために、清潔なハサミを使って作業をして、ボリュームたっぷりの花を長く楽しんでくださいね!

また、他にもガーデニングでお困りごとがある場合には、ガーデニング入門を参考にしてみてくださいね。