日本の梅雨を、いろいろな色で美しく彩ってくれる紫陽花(アジサイ)。その花言葉は、色が変わることから「移り気」や「浮気」と言われています。実際、紫陽花(アジサイ)は、土壌酸度によって青色になったり、ピンク色になったり、花色が変わることで有名です。

そのため、お庭に植えた紫陽花(アジサイ)が、期待していたような色にならなかったなんて声も聞くことがあります。紫陽花(アジサイ)の花色がなぜ変わるのかそのメカニズムを知って、今年こそ綺麗な紫陽花(アジサイ)を咲かせてみましょう。

アジサイ(紫陽花)の花色が変わる理由

紫陽花(アジサイ)の花色の変化は、花に含まれるアントシアニンと土壌に含まれるアルミニウム化学反応によって発生します。

紫陽花(アジサイ)の花色は、もともとアントシアニン本来の色味であるピンク色になります。土壌がアルカリ性(pH6.0~6.5)だと土壌に含まれるアルミニウムは溶けにくく、花色は変化しません。一方、土壌が酸性(pH5.0~5.5)だと土壌に含まれるアルミニウムが溶けやすくなり、アジサイ(紫陽花)の花に含まれるアントシアニンと結合し青色に変化します。

アジサイ(紫陽花)の土壌と花色

一般的に紫陽花(アジサイ)の花色は、酸性土壌で青色に変わり、アルカリ性土壌でピンク色に変わると言われているのはそのためです。しかしながら、実際はもっとたくさんの要素によって、花色が青色に傾くかピンク色に傾くのかが決まっています。

1
品種の特性

もともとアントシアニンを含まない白いアジサイは花色が変わりません。また、品種の特性上花色が決まっているアナベルやノリウツギなどのアジサイは、花色が変わりません。

2
土壌に含まれるアルミニウム含有量

もともとアルミニウムが含まれない土壌では花色は変化しません。

3
土壌のpH

土壌が酸性であるほど、アルミニウムが溶けやすく、青色に傾く傾向があります。

4
土壌の水分量

土壌の水分が多いほど、アルミニウムが溶けやすく、青色に傾く傾向があります。

5
土壌のリン酸含有量

土壌に含まれるリン酸が多いと、アルミニウムが溶けにくくなります。

品種の特性

アントシアニンを含むアジサイ
アジサイレッツダンスブルージャングル

一般的な紫陽花(アジサイ)は、花にアントシアニンを含んでおり、土壌のpHによって花色が変わります。ただ、白いアジサイは、もともとアントシアニンを持っていないので土壌のpHに影響を受けず、どんな土壌でも白い花になります。

品種の特性上花色が変わらないアジサイ
アメリカあじさいピンクのアナベル2ハイドランジア

また、紫陽花(アジサイ)の中には土壌のpHに影響されにくい、品種の特性上青色のアジサイやピンク色のアジサイがあります。アナベル ミディピンクノリウツギ グランデ クイックファイヤーなどがそうです。

品種の特性上青色の紫陽花(アジサイ)を、アルカリ土壌で育てても青色が残ります。同じように、品種の特性上赤色のアジサイを、酸性土壌で育てても赤色が残ります。品種の特性上花色が決まっているアジサイは、特性に合った土壌で育てることで、より美しい花色でアジサイを楽しむことができます。

土壌に含まれるアルミニウム含有量

紫陽花(アジサイ)は、アジサイ自体にもともとアルミニウムを持っていないため、土壌から吸収するアルミニウムが全てになります。日本の土壌は、もともとアルミニウムが豊富に含まれていますが、ピンクの花色を楽しみたい場合は、アルミニウムを含まない用土(ピートモス)で育てるのがおすすめです
また、青色の花色を楽しみたい場合は、土壌のアルミニウム含有量を増やしましょう。土壌のアルミニウム含有量を増やすには、コーヒーの粉や酢・錆びた釘の束を土に加えるといった迷信を聞いたことがあるかもしれませんが、硫酸アルミニウム(ミョウバン)を使うのがもっとも効果的です。500倍~1,000倍に薄めたミョウバン水を3週間に1回の頻度で2回~3回ほど与えると、アルミニウムを吸収したアジサイの花が青色に変化します。

土壌のpH

日本の土壌は、雨が多いので基本的に酸性土壌です。雨があまりあたらないベランダの軒下などで水道水だけで育てるとピンクに偏るのはそのためです。また、土壌のpH以外にも、残った肥料が土壌のpHに影響する場合があります。使用している肥料が土壌のpHに影響する成分を含んでいる場合は、使い過ぎに注意してください。

酸性肥料硫安、硫酸カリ、塩化カリなど
アルカリ性肥料石灰窒素、硝酸ソーダ、硝酸石灰など

土壌の水分量

土壌の水分量が少ないと、アルミニウムの吸収は悪くなります。水が足りないような土壌では、綺麗な青いアジサイを咲かせることはできません。

土壌のリン酸含有量

土の中にリン酸が多いと、アルミニウムが吸収されにくくなります。花をたくさんつけるにも、リン酸は必要不可欠な肥料の栄養素の1つですが、リン酸を多く含む肥料を使い続けると青い色は発色しにくくなってしまいます。

アジサイ(紫陽花)の花色の変え方

青色の花を咲かせるには

土壌 pH 5.0~5.5を目安にします
ヤマアジサイタイニータフスタッフ

土の酸度を酸性に調整するには、鹿沼土や無調整ピートモスをバランス良く加えてください。調整済ピートモスは中性に調整されているので効果がありません。春先に、無調整ピートモスを土壌に混ぜ込んで、水はけを確認しながら鹿沼土を加えて調整してください。
もしくは、青いアジサイ用の培養土を使って、土壌を酸性にしてください。雨水で育てるのも、効果が期待できるかもしれません。

また、コンクリートが近くにある場合は、土壌がアルカリ性に偏る傾向があると言われています。コンクリートから離れた場所に植えるのも効果的です。

アルミニウム含有量を増やします
アジサイの花色をピンクからブルーに変えたい
パープルグラデーションを楽しみたい場合

秋と春に500倍~1,000倍に薄めたミョウバン水を3週間に1回の頻度で2回~3回ほど与えると、アルミニウムを吸収したアジサイの花が青色に変化します。また、P(リン酸)が少ない肥料を使用して、水切れしないように栽培してください。

ミョウバン水の作り方

水500gを入れたペットボトルに1gの焼ミョウバンを入れたら、蓋をしてよく混ぜたらできあがりです。焼ミョウバンは、薬局やスーパーなどで100gで300円程度で購入できます。消臭効果もある焼ミョウバンは、制汗剤や防臭スプレーにも活用できるので1つ自宅にあると便利ですよ。

ピンク色(赤色)の花を咲かせるには

土壌 pH 6.0~6.5 を目安にします
ヤマアジサイタフスタッフ

赤玉土や腐葉土を混ぜて土を作り、そこに苦土石灰を混ぜて調整します。一般の土壌では1㎡あたり苦土石灰100gの施用でpHが 0.5上がります。但し、石灰を混ぜてから安定するには数か月かかりますので事前準備が必要になります。
pH土壌酸度計を利用して、もしくは、赤いアジサイ用の培養土を使って土壌をアルカリ性にしてください。

アルミニウム含有量を減らします

アルミニウムを含まない土(ピートモス)で育てることで、青色変化を防ぐこともできます。

花色が変わりやすい時期

アジサイの花色を大きく左右するタイミングは、大きく分けて年二回あります。

花芽を作る時期

まずは、花芽を作るタイミングです。旧枝咲きのアジサイは、花が咲き終わると翌年の花芽を枝の中で作り始めます。この花芽を作り始めてから花芽が完成する8~9月頃が、もっとも化学反応の影響を受けやすい時期になります。

花が咲き始める時期

次に、花色を左右する重要な時期は、花が咲き始めて500円硬貨程度の大きさになるタイミングです。実はこの程度の大きさの花は、ピンク系の花が咲いているのかブルー系の花が咲いているのか判断が難しいのですが、判断できた時点で花色を変える手当をすると、効果的に花色変化させることができます。

アジサイ(紫陽花)の花色の変え方注意点

1
気長に待ちましょう

アジサイ(紫陽花)は、すぐに青くなったりピンク色になるわけではありません。土壌pHやアルミニウム含有量を調整したことによる化学変化は、すでに咲いている花ではなく、成長中の蕾に影響を与えると言われています。変化は時間をかけて徐々に起こるので、気長に待つようにしましょう。

2
急激な土壌pH変化は避けましょう

土壌のpHを急激に下げ過ぎたり、急激に上げ過ぎたりすると、植物が必要な栄養素を吸収できなくなる可能性があります。土壌のpH が低くなり過ぎた場合は、石灰を施して元に戻してください。 土壌のpHが高くなり過ぎた場合は、鹿沼土や無調整ピートモスをバランス良く加えてください。

土壌のpHによって花色を変えるアジサイ

土壌のpHによって花色を変えないアジサイ

ノリウツギは、近年秋色に変化する品種がたくさん出てきています。秋に花色が変わる理由は、以下を参考にしてみてくださいね。

まとめ

アジサイ(紫陽花)は、植えっぱなしでも何年も楽しむことができるとても育てやすい庭木であるシュラブ(低木)です。花色の調整が難しいなと感じたら、品種の特性上花色が決まっているアナベルやノリウツギといったアジサイ(紫陽花)を選択するのもおすすめです。アジサイは、種類も花色もたくさんあるので、悩んだらPW(ピーダブリュー)の強い品種を選んでみるのもよいかもしれません。何年も育てる低木だから、選び抜かれた良い品種を。

シュラブ(低木)