日陰のお庭(シェードガーデン)って、本当はとっても魅力的なことをご存知でしょうか。日陰や半日陰など日当たりの悪いとされる場所は、実は植物の選び方次第でおしゃれな庭に大変身する可能性を秘めた場所なんです。多少花数は減っても、質の高い品種を選べば、お花だって楽しめます。
直射日光を避けた柔らかい光の中で、日陰の庭を楽しんでみませんか。ここでは、日陰の庭を明るく彩るポイントや、おしゃれな日陰の庭(シェードガーデン)におすすめの草花をご紹介します。
日陰の庭(シェードガーデン)とは
日陰の庭(シェードガーデン)とは、強い日差しを遮った場所に作る魅力的な庭や花壇のことです。
本来は、大きな木の木陰に半日陰を好む植物を植えて作る庭を指していますが、実際には、明るい日陰から暗い日陰までのあらゆる日陰や、木漏れ日のあたる半日陰、半日程度日の当たる庭などを含めて日陰の庭(シェードガーデン)と呼んでいます。
日陰というとなんとなく暗くてじめじめしたイメージがあるかもしれませんが、木漏れ日が当たる程度の日陰は、直射日光や強い紫外線が苦手な植物にとっては天国のような場所なんです。そんな植物は意外と多く、焼けつくような夏の日差しを遮ってくれる日陰は暑さが苦手な植物が生き生きと育つ場所でもあるのです。
日陰の種類
一言で日陰と言ってもさまざまな場所があります。
全く直射日光の差し込まない塀際などの暗い日陰から、エントランス周りのような日差しはなくてもある程度明るい北側の日陰、午前中や午後の遅い時間に日が当たる場所、広葉樹の影など木漏れ日のさす日陰など、場所によって光の量も、育つ植物も変わってきます。
また、季節によって太陽の角度が変わるため、夏は直射日光の当たる場所でも冬は日陰になることも。
おしゃれな日陰の庭(シェードガーデン)づくりは、自分の家にどのような日陰があるのか理解することから始めましょう。
午前や午後、1日2~3時間程度日のあたる日陰。庭やベランダの向き、まわりの建物や塀などによって日陰になる場合も半日陰の庭になります。季節によって日当たりが変わるのも特徴です。日の当たる時間があるので、暑さが苦手な草花などにおすすめ
落葉樹の木漏れ日が差す庭は、植物にとって理想的と言えるかもしれません。冬は陽だまり、夏は強い日差しが遮られる環境なので、春・秋は日当たりの良い場所に置きたいけれど真夏の直射日光は苦手、という草花も良く育ちます。一方、常緑樹の木陰は暗くなりがちなので耐陰性のある植物を植えましょう。
エントランス周辺などの風通しの良い明るい日陰は、意外といろいろな植物が育ちます。花をたくさんつける草花は花が少なくなりがちですが、夏の強い日差しが苦手な植物などにはおすすめの場所。鉢植えにして、季節により日当たりの良い場所に動かせるようにするとよいでしょう。
日当たりの悪い暗い日陰。日本庭園に使われるシダやアオキ、タマリュウ、ヤブランなどを使えばしっとりと落ち着いた印象になります。植物だけで雰囲気を作るのが難しいので、石畳やレンガなどの構造物を取り入れるとよいでしょう。
日陰の庭づくりのポイント
土の面積を減らそう
日陰になる場所は、土がむき出しだと暗く荒れた印象になりがちです。常緑のグランドカバープランツや、少し草丈の高い存在感のある植物やシュラブ(低木)などを取り入れてみましょう。
植栽以外にも、レンガの小路や白い砂利、明るい色のトレリスなどエクステリアも工夫してみてください。日陰の庭に置いた資材は、経年美化で年を重ねるほど趣ある雰囲気をかもし出してくれます。
日陰でも育つ植物を選ぼう
日陰の庭づくりには、日陰でも育つ植物や庭木を選ぶことがとても重要になります。実は、植物は庭木は日当たりが良い場所ばかりを好むわけではありません。日陰に強い耐陰性の高い植物を選んで、育てましょう。日陰の庭におすすめの草花は、この後ご紹介します。
日陰の庭を明るく彩ろう
日陰の庭を明るく彩るには、斑入りの葉やヒューケラ ドルチェ、ガーデンカラジウムなどのカラーリーフを取り入れてみましょう。グリーンばかりの暗かった空間が、一気に明るいおしゃれな印象に様変わりします。
日陰の庭は、夏も乾燥しにくいのでローメンテナンスなのも魅力で、クリスマスローズやミヤコワスレ、シャガなど耐陰性の強い多年草の花を楽しむこともできます。
また、日なたで花を咲かせた鉢植えの花をポイントになるように置くのもおすすめです。この場合は1~2週間ごとに日陰の庭に置く鉢と日なたの庭に置く鉢を入れ替えて楽しみましょう。
日陰の庭の作り方
長い間何も植えていない場所は、まず、雑草を抜いて深さ30cm程度まで土を耕し、腐葉土や堆肥を混ぜましょう。土が固すぎるなど状態があまり良くない場合は新しい培養土に入れ替え、緩効性肥料などを混ぜておきます。
すでに植物が植えてある場所に新しく植栽する場合は、植えてある植物を掘り起こし、残った根などを取り除き、腐葉土や堆肥を入れるか、新しい培養土を掘り起こした後の穴に補充し、緩効性肥料を混ぜておきます。
ガーデニング初心者の方は、植える場所だけでも新しい培養土にしてしまう方法がおすすめです。土にはあらかじめオルトランなどの粒剤を混ぜておくと病害虫予防になります。
土の準備が整ったら新しく植える植物をポットから抜き、根鉢を崩さないように植えつけて土を平らにならし、水をたっぷり与えます。しっかり根づくまではしおれないように、土の状態を見て水やりしましょう。
日陰の庭のお手入れ方法
日陰の庭(シェードガーデン)の肥料のやり方
植える植物にもよりますが、葉がメインの植物は、生長期に緩効性肥料を追肥する程度でかまいません。追肥のタイミングは、肥料の種類によっても異なるので、表記通りに与えてください。
長期間花を咲かせる草花の場合はエネルギーもたくさん必要なので、肥料もやや多めにあげます。花が小さくなってきたり、花の色が薄くなってきたりするのは肥料不足のサイン。追肥をするとともに草花用の液体肥料をあげましょう。いずれも、生長がとまる時期、宿根草だったら地表の葉が枯れる時期には肥料をあげないでください。
アジサイなど花を咲かせるシュラブ(低木)は、花が咲き終わった後にお礼肥をやり、冬に有機質の寒肥を施しましょう。
日陰の庭(シェードガーデン)の水のやり方
日陰は直射日光があまり当たらないので、頻繁に水やりをする必要もありません。地表が乾いていても地中にはまだ水分があることも。何日か雨が降らず、地表が白っぽく乾いていたら水やりをします。
鉢植えの花は地表が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えましょう。
日陰の庭(シェードガーデン)の季節ごとのお手入れ
春のお手入れ
宿根草や落葉樹の新芽が出る時期。植えつけにも最適です。株の周りを軽く耕して堆肥を混ぜたり緩効性肥料を施したりしましょう。雑草の芽も出てくるので小さいうちにこまめに抜いてさっぱりと。育ちすぎた常緑シュラブは梅雨前に軽く剪定して形を整えます。
夏のお手入れ
梅雨前から夏にかけては雑草も増える時期。こまめに雑草を抜いて、風通し良く保ちます。増えすぎたグランドカバープランツは切り戻しをしてすっきりさせましょう。一般的なアジサイは7月末までに花後の剪定を終わらせます。
秋のお手入れ
秋もガーデニングに最適なシーズン。夏の間お休みしていた花期の長い花も再び花をつけ始めます。肥料が途切れないように注意しましょう。移植や植えつけにも適した時期。宿根草は、晩秋になったら肥料を与えず休眠の準備を始めます。
冬のお手入れ
宿根草は地上部が枯れていても根は生きています。寒さを防ぐために、腐葉土などでマルチングを行いましょう。アナベルなどは剪定時期。春になる前に剪定を行えばまた花を楽しめます。落葉樹は弱い枝や邪魔な枝などを剪定して春に備えましょう。
日陰の庭(シェードガーデン)におすすめの草花
ヒューケラ
ヒューケラ ドルチェ分類:ユキノシタ科ツボサンゴ属 学名:Heuchera hybrid
日陰を好む植物は、例えば、ヒューケラ・ドルチェです。ヒューケラ・ドルチェは夏の直射日光の下でも良く育つように改良された品種ですが、もともとヒューケラは日陰でも良く育つ多年草。日当たりのあまり良くないシェードガーデンを華やかに演出したい時にもおすすめです。大人っぽいダークな銅葉や黒色、鮮やかな赤やオレンジ、爽やかなライムグリーンなど葉の色は実に多彩。ヒューケラだけでもおしゃれな花壇が完成します。
カラジウム(カラジューム)
ガーデンカラジウム ハートトゥハート分類:サトイモ科カラジウム属 学名:Caladium hortulanum
日向・日陰・室内と場所を問わず楽しむことができるカラーリーフ、ガーデンカラジウム ハートトゥハート。熱帯性のカラーリーフで、大きめの葉がお庭をトロピカルに演出してくれ、日陰の庭で使うと一気に明るくなります。耐寒性は弱いので、花壇で育てると一年草扱いにはなりますが、冬は室内で観葉植物として育てると翌年も楽しむことができます。また、冬に球根を堀上げて春に植えて翌年もまた楽しむこともできます。
ヒポエステス
ガーデンヒポエルテス ピッピ分類:キツネノマゴカ科ヒポエステス属 学名:Hypoestes phyllostachya
赤色や白色、ピンク色などの斑入りの葉が美しいガーデンヒポエステス ピッピ。斑入りの大きな葉は日陰を明るくしたいときに最適。直射日光の下でも暗い日陰でも育つ丈夫な植物で、草丈30cmほどのこんもりした株姿に生育します。春から晩秋まで楽しめるので、シェードガーデンにぜひ取り入れてみてください。
ギボウシ(ホスタ)
分類:キジカクシ科ギボウシ属中心から大きく広がる葉の重なりが魅力的なギボウシ(ホスタ)も宿根草。6~7月頃に花が咲き、年々大きな株に生長します。耐陰性が強く日陰でもよく育つので、シェードガーデンに取り入れたい植物です。日陰を明るい印象にしたい時は、斑入りや明るい黄緑色系の品種を選んでみましょう。
半日陰の庭で育てられるおすすめの草花
ネペタ キャットミント
ネペタ キャッツパジャマ分類:シソ科イヌハッカ属 学名:Nepeta hybrid
ネペタ キャッツパジャマは、耐暑性に優れ春の終わりから秋にかけてラベンダーのような雰囲気の花を咲かせます。乾燥にも強く、地植えであれば根が張れば植えっぱなしでも育つ大変お手入れが簡単な多年草で、半日陰でも育ち病害虫の心配もほとんどありません。一年目よりも冬越しをした二年目の方がたくさんの花を楽しめます。
ベロニカ
ベロニカ ウィザーディング分類:オオバコ科ベロニカ属 学名:Veronica hybrid
ベロニカ ウィザーディングは、立ち性で穂状に花を咲かせるベロニカで、半日陰でも花穂を咲かせる多年草です。濃い緑色の葉で、一般的なベロニカよりも耐病性に優れています。翌年の花を咲かせるために冬はしっかりと寒さにあてましょう。
トレニア
スーパートレニア カタリーナ分類:アゼトウガラシ科ツルウリクサ属 学名:Torenia hybrid
春から晩秋まで花期が長いスーパートレニア カタリーナ。爽やかな花色で庭を彩る「ブルーリバー」「ピンクリバー」「アイスリバー」に、「アメジスト」と「ラムレーズン」が仲間入り!暑さや雨に強く、とても育てやすいのでガーデニング初心者さんでも大丈夫ですが、真夏は水切れしやすいので半日陰で楽しむのがおすすめです。半日陰でも圧倒的な花つきの良さを実感できますよ。
ユーフォルビア
ユーフォルビア ダイアモンドフロスト分類:トウダイグサ科ニシキソウ属 学名:Chamaesyce hybrid
白いカスミソウのような花が春から晩秋まで咲き続けるユーフォルビアダイヤモンドフロスト。寄せ植えにもグランドカバーとしても、ナチュラルな雰囲気で半日陰を明るくしてくれます。強健な性質で日当たりの良い場所から半日陰まで、さまざまな場所で育ちますが、あまり日当たりが悪いと徒長してしまうので注意しましょう。
ヘリオトロープ
ヘリオトロープ ブライドパール分類:ムラサキ科キダチルリソウ属 学名:Heliotropium ovalifolium
夏の直射日光直下よりも、少し半日陰で育てた方が夏中たくさんの花を咲かせ続けるのがヘリオトロープです。小さい小花を咲かせ、半日陰の庭を涼し気に演出するヘリオトロープ ブライドパール。真珠のような純白のお花が枝垂れ咲きます。
ヘリオトロープ
ヘリオトロープ ブライドブルー分類:ムラサキ科キダチルリソウ属 学名:Heliotropium Arborescens
半日陰の庭に大きな青い花を咲かせるのは、ヘリオトロープ ブライドブルーです。単調になりがちな半日陰のお庭にボリュームある明るいブルーのお花を咲かせます。シェードガーデンがパッと明るい印象に変わります。
クリスマスローズ
分類:キンポウゲ科 クリスマスローズ属花が少なくなる2月頃~春にかけて、うつむくように咲く花をつけるクリスマスローズ。夏の直射日光が苦手で、冬に陽だまりになるような明るい半日陰で良く育ちます。クリスマスローズは、切れ込みのある常緑の葉のフォルムも魅力のひとつ。年々大きな株に育っていく多年草なので、広めのスペースを取って植えつけるとよいでしょう。
午前中日の当たる場所は、意外とたくさんの植物を育てることが可能で、夏の西日を嫌う植物にも適した場所です。スーパーサルビア・ロックンロールやスーパージギタリス、スーパーゼラニウム・チャンピオンなども午前中日の当たる場所を好みます。
1日中日が良く当たる場所よりも育ち方はゆっくりですが、スーパーチュニア®など強健な植物も育ち、花を楽しめますよ!
まとめ
植物を選べば、実は魅力たっぷりのシェードガーデン。ちゃんと育つかどうか不安な場合は、鉢植えで試してみるのもおすすめです。まずは1日の日の当たり方などをよく観察して、シェードガーデンにおすすめの庭木も参考にして、素敵なシェードガーデンを作ってみてくださいね。